角田和雄著『産業技術力はいかにして創られるか』


 本書は、「ものづくり産業」における科学と技術と工学という理系職業人の思考と仕事の全体像を、初心者にも理解しやすい多くの具体例で明快に説明する初めてのテキスト。

 日本は資源小国であり、いま全エネルギーの約80%、カロリーベースで食料の約60%、工業原料のほぼ%は輸入に頼っている。最近の日本は、ものづくり産業の海外移転など、海外投資による収入が増えてきたが、その額はまだ小さい。そのため、世界の人々の暮らしと社会に役立つとともに、高い付加価値をもった商品群を常に生みだし、その輸出による外貨で日本に必要な物資を輸入するのが、これからの産業技術立国日本の進むべき道である。

 本書は、どんな問題を解決するにも、その全体像をまず歴史的、次に大局的、さらに多面的に考察することが基本であるとの観点から、次のことを明らかにする。

 1章では、これまで地球の文明が人類革命、農業革命、都市革命、精神革命、科学革命、産業革命、情報革命の順に進化してきたことを示す。そして、この文明の進化には、およそ350万年前の人類誕生とともに生まれた「ものづくり技術」が、大きな役割を果たしてきた事実を明らかにする。

 2章では、文明創成の基盤になった「技術」と「科学」と「工学」の役割の違いを明らかにする。そして、最近の極度に細分化された多くの領域別の工学が、産業になって人々の暮らしと社会に役立つまでのプロセスを明らかにし、産業技術創成という仕事の全体像を示す。 

 3章では、世界で初めて日本が開発した産業技術群を112例ほど示し、世界の人々の暮らしと社会に貢献する日本の技術創造力の強さを明らかにする。それによって、日本の強い産業技術創造力の継承に役立てる。

 4章では、常に新しい産業技術を生みだすことで、近代から現代日本を築いてきた日本社会の仕組みの全貌を歴史的に明らかにし、そのプロセスの伝承を試みる。

 本書は、技術と科学と工学と産業の長い歴史における個々の事実を知ることよりも、技術によって新しい文明を築いてきた人々の思考と方法の伝達に狙いをおき、これから理系を目指す若者、現在の理工系学生、産業技術者、産業界の文系人を含めた一般の人々も対象に、「ものづくり産業」における科学と技術と工学という理系職業人の思考と仕事の全体像を、初心者にも理解しやすい多くの具体例で明快に説明するテキストである。

 養賢堂( http://www.yokendo.co.jp )刊。定価2,520円(本体価格2,400円)、A5判、198頁。