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第113回 秋の叙勲に、わが国ベアリング業界の先進性を思う

提供:NTN提供:NTN 平成22年秋の叙勲では各界で功労のあった計4,173名が受章、ベアリング分野からNTN会長の鈴木泰信氏が旭日重光章を受章した。同氏は、同社社長、会長として産業の発展に寄与したほか、日本ベアリング工業会の会長、ならびに近年設立された世界ベアリング協会の初代会長としてベアリング業界の発展に寄与した功績が評価されたもの。

世界を牽引するベアリング大国日本


NTN鈴木泰信会長(提供:NTN)NTN鈴木泰信会長(提供:NTN) 技術およびマーケットを牽引する日本のベアリング業界は、早くからグローバル展開を進め、それととともに欧米やアジアなどのベアリング業界との間で国際的な協力、連携を進めてきている。1993年に米フロリダ州で日米欧三極の業界首脳が初めて一堂に会し、第1回首脳会合が開催された。その後2005年に米サンフランシスコで開催された第7回首脳会合において、環境問題や偽造品問題などベアリング産業の共通の利害問題に対し、関連法規に基づきながら効率的に対処する目的で、世界ベアリング協会(WBA)設立の提案があり、2006年9月には京都でWBA設立総会が開催されWBAが設立、鈴木氏が初のWBA会長に就任した。

 ベアリングは本欄でも度々取り上げているとおり、自動車・新幹線や風力発電用など、あらゆる機械の回転部分を支え、省資源や環境保全に貢献する製品として、その重要性が年々高まってきている。また、日本から世界に向け発信できる優位性の高い商品の一つであり、それゆえ日本製ベアリングの世界での流通とともに、1990年代の終わりから偽造ベアリング製品がアジア、中近東、中南米、アフリカなどに多数流通、問題化してきていると言えよう。これに対し日本ベアリング工業会では、こうした偽造品を使用した自動車や電気製品などは早期破損に繋がる可能性が高く、消費者や工場の作業者などを危険にさらすことになるほか、機械の突然停止による生産効率の低下、メンテナンスコストの増大など経済的な損失を招くことも少なくないとの懸念から、世界に先駆け、不正商品の生産拠点があると思われる中国に2000年11月末に第1次ミッションを派遣、以来2008年までに第8次ミッションを派遣し、中国政府機関に対し不正なベアリングによる身体、生命への危険性を訴えながら、その製造・販売の撲滅に向け取締りの要請を行うなどの対策に努めている。WBAでもこの日本ベアリング工業会の取組みが評価され、偽造品対策が強化されてきている。

省エネ・高信頼性ベアリング製品の開発によりと市場投入によりさらなる活性化を


WBA京都設立総会(提供:日本ベアリング工業会)WBA京都設立総会(提供:日本ベアリング工業会) 一方、WBAで世界共通の課題としている地球環境問題について、日本ベアリング工業会では地球環境対策委員会を発足して、ベアリング業界として本問題に対する取組みを活発に行っている。たとえば地球温暖化対策における目標として、2010年度の二酸化炭素排出原単位(二酸化炭素排出量(t、CO2)/ベアリング付加価値生産高(金額))を1997年度比13%削減に努めるとし、廃棄物対策における目標として、廃棄物の再資源化率を2010年度に90%に向上するよう努めるなどとしている。CO2削減へのベアリングの取組みとしては、NTNの開発品の例で言えば、自動車トランスミッション用スラストニードル軸受の回転トルクを50%低減した「低トルクスラストニードル軸受」などが挙げられよう。廃棄物の再資源化の同社の例としては、ベアリング製造工程で発生する研削スラッジを金属と研削液に分離する処理技術とその設備(研削スラッジ固形化装置)を開発、金属と研削液を資源として再利用するリサイクル技術を確立したことなどが挙げられよう。わが国の省エネベアリング製品、ベアリング分野での廃棄物対策もまた、WBAでも評価され、模範とされている。

 秋の褒章でのベアリング業界からの栄えある受章を機に、あらためて世界に先駆けたわが国ベアリング業界が一丸となっての不正商品撤廃による製品の信頼性向上、地球環境保全への取組みと、世界のベアリング業界への波及の進展を思いつつ、世界に誇る省エネ・高信頼性ベアリング製品のたゆみない開発と市場投入によって、わが国ものづくり産業の活性化につながっていくことを期待したい。