理研、人工筋肉など視野に光を運動エネルギーに変える新高分子素材の開発

ポリマーブラシの分子構造(左)とその模式図(中央)、ボトル洗浄用のブラシ(右)ポリマーブラシの分子構造(左)とその模式図(中央)、ボトル洗浄用のブラシ(右) 理化学研究所( http://www.riken.jp )は、光を当てると筋肉のように「機械的に動く」機能を発現する分子(アゾベンゼン分子)を組み込んだブラシ状の高分子「ポリマーブラシ」を高機能フィルムに加工する手法を開発した。


フィルムの光による変形(上)とアゾベンゼンの光異性化に伴う構造変化(下)フィルムの光による変形(上)とアゾベンゼンの光異性化に伴う構造変化(下) ポリマーブラシは、非常に長い側鎖を持った高分子の一種で、側鎖同士の体積による影響でシリンダー形状(筒状)をとることが知られているという。研究グループは、光応答性分子群の開発を目的として、光を感じて構造変化するアゾベンゼン分子を側鎖に高密度に組み込んだポリマーブラシを設計し、1本あたりの平均分子量が約15万のポリマーブラシを合成した。

 研究グループは、光応答性ユニットとしてアゾベンゼン分子を組み込んだポリマーブラシを、延伸したテフロンシートに挟み込んでアイロンに似た熱と圧力を加える操作を施すと、3次元的な階層構造を一挙に形成することを初めて見出した。内部構造を詳細に調べたところ、ポリマーブラシ1本1本が、規則性のある3次元集積構造を形成し、フィルム表面に対して垂直に配列しているという、分子配向構造をしていることが分かった。

ポリマーブラシが形成する階層構造の模式図ポリマーブラシが形成する階層構造の模式図 さらに、この特異な分子配向構造によって、ポリマーブラシに組み込んだアゾベンゼン分子を光照射で構造変化させると、この分子レベルの微細な動きが一方向に集約し、結果としてフィルムが湾曲するという巨視的変形を引き起こした。つまり、この新しい高分子材料は、光エネルギーを運動エネルギーに変換する、著しい光応答機能を持つことが明らかとなった。この作製手法は、簡便に分子を大面積で階層的に配列させることができ、これまでの材料製造プロセスへの応用だけでなく、次世代の機能材料開発に革新をもたらすものと期待される。また、今回のフィルムが示す光応答機能は、光エネルギーを運動エネルギーに変換するため、光で収縮・膨張を繰り返す新たな人工筋肉材料への応用・展開が見込まれるという。