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日立化成工業、CFRPから回収したCFが新品に比べて1/4の製造エネルギーにできるリサイクル技術

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 日立化成工業( http://www.hitachi-chem.co.jp )は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)から同社の常圧溶解法リサイクル技術を用いて回収した炭素繊維(CF)の評価を行った結果、新品のCFに比べ、必要なエネルギーを1/4に低減できることを解明した。

 CFRPはCFと熱硬化性樹脂等を材料とし、現在、航空機や一部の自動車、スポーツ用品等に使用されている。近年、航空機や自動車製造会社においては環境に配慮した研究開発が進められており、燃料等の価格高騰に伴う燃費向上策のひとつとして、鉄の1/4の比重であるCFRPが軽量化の材料として注目されており、今後の需要拡大が見込まれている。

 しかし、材料となるCFは新品の製造エネルギーが大きく、環境保全の観点から、CFRPからCFを回収するリサイクル技術の研究が現在進められている。CFRPの材料であるエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂は、成形後の分解が技術的に難しく、これまで提案されてきたリサイクル技術の多くが粉砕などの前処理や、250℃以上の高温加熱、高圧力での溶解などの工程が必要な上、高品質な長繊維の回収が難しい等の課題があったという。

 同社は2004年に、触媒に食品添加物としても利用が認められているリン酸カリウムを溶媒にベンジルアルコールを用い、常圧下で180℃、10時間前後で樹脂を溶解することにより、CFやエポキシ樹脂等の素材を分離しリサイクルできる常圧溶解法を確立した。この技術は、粉砕などの前処理工程や、加圧設備が不要で、低温加熱による溶解が可能であることから、安全面だけでなく、加工コスト面でも優れている。

 同社では今回、本技術を用いて廃棄テニスラケット(CFRP製)から回収したCFの評価を行った結果、新品CFと比較し、製造時に必要なエネルギーが約1/4の63MJ/kg(メガジュール/キログラム)に低減できることを解明した。今後は、本技術の航空機や自動車製造会社等への提案を進め、高価なCFのリサイクルによる低コスト化、低エネルギー化の実現に努めていく。