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富士フィルムなど、高い耐熱性・絶縁性を両立したフレキシブルCIGS太陽電池用基板

ステンレス基板の集積型フレキシブルCIGS太陽電池サブモジュール(10cm×10cm) 富士フイルム( http://fujifilm.jp )は、CIGS太陽電池の製造工程で要求される500℃以上の耐熱性と高い絶縁性を両立した独自のフレキシブル太陽電池用基板(以下、フレキシブル基板)を開発した。産業技術総合研究所( http://www.aist.go.jp )との共同研究により、新開発のフレキシブル基板を用いた小面積のCIGS太陽電池において光電変換効率18.1%、複数の太陽電池を1枚の基板上で直列に接続したCIGS太陽電池サブモジュールにおいて光電変換効率15.0%を達成した。

 今回開発したフレキシブル基板を用いたCIGS太陽電池は、ガラス基板を使った場合と比較して、面積当たりの重量を1/2以下に軽量化可能で、かつ結晶系シリコン太陽電池並の高効率を実現できることが特長。軽量な特長を生かし、車や人工衛星への搭載、建材との貼り合せなど、新たな用途への応用が期待される。

今回開発した絶縁層付きフレキシブル基板を用いたCIGS太陽電池サブモジュールの模式図今回開発した絶縁層付きフレキシブル基板を用いたCIGS太陽電池サブモジュールの模式図

 近年、現在主流である結晶系シリコン太陽電池以外にも様々な種類の太陽電池が市場に登場している。この中でも、CIGS太陽電池は光電変換効率が高く、生産性に優れるなどの特長を持っている。この特長を生かして、ガラス以外のフレキシブル基板に太陽電池を作製することによる軽量化や、ロール・ツー・ロール製造による低コストでの量産化などを狙い、研究機関や企業などで活発に開発が行なわれている。しかしCIGS太陽電池は、光電変換層の成膜に500℃を超える高温を必要とするため、ポリイミドのような樹脂基板では高効率を実現できなかった。また、ステンレス(SUS)のような導電性基板では、太陽電池を直列接続するために、基板の裁断や導線での配線など複雑な製造プロセスが必要となり、コスト低減に課題があるとされている。

 このような課題を解決するため、富士フイルムはアルミとSUSの合板を基材に用いることで耐熱性を高め、アルミ表面に絶縁層を形成したフレキシブル基板を開発した。同社オフセット印刷用刷版材料「CTP版」の製造に用いるアルミ陽極酸化法を応用することで、アルミ表面に絶縁性を持たせ、500℃を超える製膜温度への耐熱性と高い絶縁性を両立している。陽極酸化法により形成した絶縁層は、界面密着性が良好で、ピンホールなどの局所欠陥が生じにくいという特長を有しており、大面積化に適している。絶縁層を付与したことにより、同一基板上で直列接続構造を有する太陽電池が作製可能となる。

 また、線膨張係数の大きなアルミ単体ではなく、SUSとアルミを貼り合わせた合板構造を採用することにより、線膨張係数を光電変換層に合わせることに成功した。これによって成膜時の温度変化による光電変換層の歪み発生が抑制でき、高効率な太陽電池の作製を可能としている。

 今回、このフレキシブル基板を用い、産総研と協働で高効率CIGS太陽電池の開発を行なった。CIGSを用いた光電変換層は、成膜中にナトリウム(Na)を供給することでその特性が向上することが知られている。産総研が開発した0.1µm程度の極めて薄いケイ酸塩ガラス層(Na含有)を基板上に形成する技術を応用することで、高い変換効率を実現した。

 富士フイルムは今後、今回開発したロール・ツー・ロールで製造可能なフレキシブル基板によって、軽量・高効率・低コストの特長を持つCIGS太陽電池の実用化に貢献していく。