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NEDO、安全で人体に負担の少ない高機能手術支援ロボットを開発

消化器外科用インテリジェント手術支援ロボット全景消化器外科用インテリジェント手術支援ロボット全景 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、「がん超早期診断・治療機器の総合研究開発」の一環として、医師や看護師が扱いやすく、正常な臓器機能を可能な限り温存できるコンパクトな診断・治療一体型の低侵襲内視鏡手術支援ロボットを開発した。

 今回開発した手術支援ロボットは、マスター・スレーブ式と呼ばれるもので、術者が手元のコンソール(マスター)を操作して、患者の体内に挿入されたマニピュレータ(ロボットの腕や手に相当)を操作するもの。術者の目の役割をするのは、患者に挿入された3D(立体)内視鏡となる。このプロジェクトでは、脳神経外科用、胸部外科用、消化器外科用と3種類の手術支援ロボットを開発したが、コンソールや制御装置などは共通とし、マニュピレータは各対象部位に最適な形状となっている。いずれのマニピュレータにも、対象部位に応じて必要とされる高度な処置具やセンサーが装備されており、さらに高精度な3D画像を使用することで、手術部位をリアルに捉えて治療ができ、患者の生体情報や術前検査画像(CTやMRIなど)や術中の超音波画像をリアルタイムに術者へ提示できるなど、より安全な手術が可能になる。

 この手術支援ロボットの開発により、執刀医らの負担が軽減され、患者にとっても入院期間の短縮による医療費の低減化や早期社会復帰につながるなど、より質の高い医療を提供できるようになるという。

 内視鏡外科手術は、手術創が小さく低侵襲であるため、術後の回復が早く、早期の社会復帰が可能。しかし、患部を治療する際、体外から挿入した専用の手術器具を用いた微細な手術操作や内視鏡を用いるために生じる制限された視野内において高度な手術技術が求められるなど、執刀医、医療スタッフ等の医療従事者の負担が大きいという課題があった。

 NEDOでは、2007年度から「がん超早期診断・治療機器の総合研究開発/内視鏡下手術支援システムの研究開発(旧名:インテリジェント手術機器研究開発)」プロジェクト(研究代表者:橋爪 誠 九州大学大学院医学研究院 教授)に取り組み、より安全でより負担の少ない治療技術を目指し、我が国が世界に誇る内視鏡技術、ロボット後術、センシング技術等を融合し、医療従事者が扱いやすく、患部を精度良く効率的に治療し、正常な臓器機能を可能な限り温存できるコンパクトな診断・治療一体型の低侵襲内視鏡手術支援ロボット等の開発を実施した。

 この手術支援ロボットにより、患者、医療従事者ともにより負担が少なく、より安全な手術が可能となり、入院期間の短縮による医療費の低減化や早期社会復帰にもつながるなど、より質の高い医療を提供する。また、将来的にはIT技術を活用した遠隔治療への展開も考えられ、地域格差や病院間格差がなく、患者が等しく優れた医療を受けられるようになることが期待される。