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バイオメット・ジャパン、ビタミンEを浸漬/浸透させる技術を人工膝関節のポリエチレン製ベアリングに展開

 バイオメット・ジャパン( https://www.biomet.co.jp )は、人工股関節の部品であるポリエチレン製ライナーにビタミンEを浸漬/浸透させる「E1(イーワン)」技術を人工膝関節のポリエチレン製ベアリングに展開した。

人工膝関節のイラスト。左図真ん中の部分がポリエチレン製のベアリング 人工膝関節のイラスト。左図真ん中の部分がポリエチレン製のベアリング  近年の患者の低年齢化、より活動性の高い術後生活へのニーズに対応するには、 人工膝関節の耐用年数に大きく影響を及ぼす「酸化」への対応が大きな課題となっていたという。 本技術は天然抗酸化剤のビタミンEを浸漬/浸透させることによって持続的な耐酸化機能を持たせることにより、 人工膝関節のポリエチレン耐久性に不可欠な摩耗と破損を長期的に抑制する技術として期待されている。 「E1」が導入される次世代の人工膝関節では、 従来、一般的に15年~20年と言われてきた人工膝関節のさらなる長寿命化が期待される。

 膝関節の複雑な動きにおいては、人工膝関節のポリエチレンのある部分に集中してストレスがかかりやすく、 ストレスによってポリエチレンに亀裂が入り、酸化が加速されるとポリエチレンの劣化が進み、 そこから摩耗や破損するなどの問題があり、人工膝関節が再置換に至る主要な原因となる。

ビタミンEの浸漬/浸透によりやや黄金色がかった色のポリエチレン。 ビタミンEの浸漬/浸透によりやや黄金色がかった色のポリエチレン。  このため、人工膝関節では、耐久性の向上のため、様々な技術の研究開発が進められてきた。 その主なテーマに「摩耗の低減」と「機械的強度の維持」が挙げられる。 このため、近年では、ポリエチレンにγ(ガンマ)線を照射して、 分子結合が強固で摩耗に強いポリエチレン(ハイリークロスリンクポリエチレン:HXLPE)を生成する 技術が取り入れられるようになっている。

 しかし、HXLPEでは、ポリエチレンを架橋結合することにより「摩耗の低減」は実現できるが、 「耐酸化」と「機械的特性の維持」に対応しない限り、 長期的な耐久性は得られないという課題があったという。

 E1の技術により、抗酸化物質として知られるビタミンEをポリエチレン(HXLPE)に浸透させておくことで、 繰り返しストレスがかかることで発生する不安定なポリエチレン分子部分に酸素よりも早くビタミンEが反応することで酸化を防止し、 持続的に耐酸化性を持たせるとともに、機械的強度を維持することに成功した。 E1を導入した人工膝関節のポリエチレンの耐久性テストでは、摩耗粉の産生を87%低減しつつ、 体内と同じく酸素が豊富な環境下での繰り返しの負荷試験においても、計測可能な酸化や亀裂は認められなかったという。