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日立金属など、鉛フリー圧電薄膜を用いた3軸角速度センサーを開発

3軸角速度センサー素子3軸角速度センサー素子 日立金属とワコーは、鉛フリー圧電薄膜を用いた3軸角速度センサーを開発した。地球環境保全に向け、デジタルカメラの手振れ検知や自動車の姿勢検知などに用いられる角速度センサーの鉛フリー化の進展が期待されるという。

 圧電薄膜は、加えられた圧力を電圧に、また加えられた電圧を圧力に変換する圧電効果を持つ圧電体を薄く形成したもので、一般的にチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)という鉛を含んだ材料が使われている。現在、自動車の姿勢検知やデジタルカメラの手振れ検知に利用される角速度センサーやインクジェットプリンタヘッドに広く使われており、今後は、プロジェクタやヘッドアップディスプレイに利用されるMEMSミラー素子やエナジーハーベスタなど用途拡大が見込まれているという。

 近年、地球環境保全への意識の高まりから鉛フリー対応が求められているが、鉛フリーの材料を用いた圧電薄膜では、充分な圧電特性を満たすことが難しく、また微細加工が難しいことが課題となっていた。

 今回、両社は、鉛フリーの圧電材料として、環境親和性に優れたニオブ酸カリウムナトリウム(KNN)を選定しており、PZT薄膜センサーと同等レベルの角速度検知特性を実現している。今回の開発では、日立金属が圧電薄膜製膜からセンサー素子作製までの工程を担い、ワコーが素子設計およびセンサー特性評価を実施している。

 日立金属は、2010年(当時は日立電線)に実用可能レベルの圧電特性100pm/V以上を持った鉛フリーKNN圧電薄膜を開発している。今回、「6インチサイズでの製膜技術」、「薄膜微細加工技術」、「電極形成技術」などの角速度センサー素子作製に必要となる各種要素技術の開発を進め、それらの成果を用いて3軸角速度センサーの開発を実現した。

 また、既存のPZT薄膜センサーでは素子作製工程で260℃以上の温度が加わると脱分極が起こり、素子特性が劣化するという問題があるが、開発した鉛フリーKNN圧電薄膜センサーは温度耐性に優れており、400℃の温度を加えても特性が劣化しないことが確認できている。これにより、半田リフロー工程においても環境親和性の高い半田材料の選定が可能になるという。