フェローテック、サーモモジュールと磁性流体を核に自動車事業を増強

 フェローテックホールディングス( http://www.ferrotec.co.jp/ )傘下のフェローテック( http://www.ferrotec.jp/ )は本年1月、「オートモーティブ プロジェクト」を立ち上げた。すでに自動車用温度調節シート向けで多くの採用実績を持つ「サーモモジュール(ペルチェ素子)」、さらには同社創業の技術であり、車載スピーカーで実績のある「磁性流体」などを中心に、自動車市場の攻略に取り組んでいる。

 第一弾として、1月17日~19日に東京都江東区の東京ビッグサイトで開催された「オートモーティブワールド2018」に出展。燃費向上につながる自動車の軽量化や、電動化、自動運転化などに取り組む自動車業界に対し、サーモモジュールや磁性流体の新しい適用を提案、多くの反響を得ているという。ここでは、フェローテック TE営業部長・八田貴幸氏に、自動車分野での今後の事業展開について話を聞いた。

180502フェローテック0: TE営業部長・八田貴幸氏180502フェローテック0: TE営業部長・八田貴幸氏

省エネ・コンパクトな温調システム「サーモモジュール」の有用性

 サーモモジュール(ペルチェ素子)は、対象物を温めたり冷やしたりする半導体冷熱素子のことで、N型とP型という異なる性質を持った半導体素子を組み合わせたモジュールに、直流の電気を流すと熱が移動し、一方の面が吸熱(冷却)し、反対の面が放熱(加熱)するというペルチェ効果を応用したもの。電源の極性を逆にすると、吸熱と放熱を簡単に切り替えることができる。

 サーモモジュールから放熱される熱量(Qh)は、吸熱量(Qc)と総消費電力(VI=ジュール熱)との総和となるため、ジュール効果によって発生する熱エネルギー(ジュール熱)に比べ、小さな電気で大きな加熱ができる省エネヒーターを構成できる。

温度調整用途の拡充
 フェローテックのサーモモジュール製品は、売上の30%が自動車向けであり、そのメインが、自動車用温調シート向けである。小型、軽量でフロンを必要とせずに温度制御を行えることから、カップホルダーなどへの検討が自動車メーカーで進んでいるほか、夏場/冬場に熱くなりすぎたり冷たくなりすぎたりしないようサーモモジュールを組み込んだ「温調ステアリング」も、採用が検討されている。

ヘッドアップディスプレイ
 また、ヘッドアップディスプレイ(HUD)において、LED光源に比べ色の再現性など優位性の多い高強度レーザーを照射して走行データをフロントガラスに投影するレーザープロジェクターでは、熱によって色調やコントラストが変わってしまうという問題がある。これに対し、省スペースで温度制御が可能なサーモモジュールの採用によって、レーザー光源の特長を活かした高コントラストでクリアな映像を投影し続けることを可能としている。

EV用バッテリー向け
 電気自動車(EV)などのバッテリーとなるリチウムイオン電池は温度にセンシティブで、高温/低温のいずれでも劣化が促進しやすい。ラジエーターを用いた水冷などの自然冷却では細やかな温度制御ができず、微妙な温度制御が可能なサーモモジュールが有効と見られる。EVでは重要増も電力消費の増大につながることから、軽量の温調システムとしてもサーモモジュールが貢献できる。

180502フェローテック1’: サーモモジュールの応用例180502フェローテック1’: サーモモジュールの応用例

ドライビングフィール向上や電動化対応で活躍が期待される磁性流体

 磁性流体は、流体でありながら外部磁場によって磁性を帯び、磁石に吸い寄せられる機能性材料である。基本成分は、磁性微粒子、界面活性剤、キャリアとなるベース液であるが、直径約10nmの極小の酸化鉄粒子が、凝集を防ぐ界面活性剤で被膜され、安定的に分散したコロイド状の液体となっている。

 磁性流体の液体Oリングをシャフト上に形成して外部からのコンタミを防ぐ磁性流体シールは、真空シールとして半導体製造装置などで多くの実績を持つ。自動車分野では、磁性流体の放熱効果やダンピング効果などによる高音質化や小型化などからスピーカーに採用されているが、今後はドライビングフィール向上や電動化対応などで適用拡大を狙う。

振動制御用磁性流体
 磁性流体よりも大きい磁性粒子からなる「振動制御用 新磁性流体」を開発。印加磁場によって磁性粒子の配列を制御し振動をアクティブに抑制する「アクティブダンパー」への適用を検討している。開発品は、同用途で市場で流通している磁気粘性流体(MRF)に比べ、磁気応答性、印加磁場によるせん断力(粘性)変化、分散性、潤滑特性などで優位性のあるものを目指しており、フレキシブルなコストと技術対応をもって、様々な振動吸収に適用できると考えている。

 米欧のメーカーではMRFの粒子が均一に分散せず沈殿しまっても、攪拌されて何とか機能できるとして分散の不均一性を許容しているが、性能の長期保証を重視する日本のメーカーには、当社の磁性流体のノウハウを活かした長所を訴求できると考えており、各々の特徴を活かせる応用を提案し、採用につなげていきたい。

180502フェローテック2: 印加磁場による粒子の配列制御180502フェローテック2: 印加磁場による粒子の配列制御

磁性流体コンポジット材料
 磁性流体のナノ技術をベースとして、高い周波数領域でも磁気応答性が優れ、磁気ヒステリシスが極めてゼロに近い当社の磁性コア材料「Hzero®コンポジット」は、各種樹脂材料に磁性流体を均一に分散させて練り込むことで、固形物、ゴム、ゲル、スポンジ材料から、接着剤といった形で提供できる。例えばスポンジ材料は、車載カメラにおいて振動や衝撃を吸収するようにレンズ回りを緩く保持する用途などに適用できると見ている。

 また、先述の振動制御用途において、ダンパーでは液体状の磁性流体が適しているのに対し、エンジンの振動を吸収する用途では、ゲル材料が適していると考えている。エンジンの振動には、アイドリング時などに発生する低周波大振幅領域と、高速回転時に発生する高周波微小振幅領域があり、個々の振動に対応する低粘度および高粘度の液体が封入されたベローズなどが適用されている。この用途にゲル状の磁性流体を用いることで、両方の周波数領域の振動をアクティブに制振できる。

 また、磁気ヒステリシスがない磁性樹脂(接着剤・シーラント)として、磁場による誘導によって、クラックの検出や補修、漏洩磁束の抑制などで、エネルギー効率を改善できる。例えば、モーターの使用がますます増えていく自動車業界において、Hzero®コンポジットによる漏洩磁束の改善により、省エネ、バッテリー寿命延長に貢献できるのではないかと考えている。

高精度直流電流測定センサ
 磁性流体は磁界を作用させることで磁化するが、磁界を取り除くとすぐに磁化が消失する、いわゆる「超常磁性」を示す。磁性流体をベースにした、超常磁性を有する固体材料Hzero®を磁性コアとした「高精度直流測定センサ」は、ゼロ点まで精度良く測定できるものである。リチウムイオン電池では、過放電と過充電を避けるために安全マージンをかなり大きくとっているが、より精度良く充電レベル(SOC)を推定できるようになることで、車載バッテリーの利用効率の向上、電気自動車(EV)の走行距離延長につながる。

今後の展開

サーモモジュールの将来的な適用
 自動運転システムのセンサなどで採用が有力な、レーザー光を使ったレーダー「LiDAR(ライダー)システム」や、より遠方の照射を可能にするレーザーヘッドライトなどでも、高出力化に伴う発熱を抑制する温度制御が必要になる。サーモモジュールは大空間の温度調整には不適だが、局所的な温度制御では、コンプレッサーなどの外部装置を必要とせず小型・軽量で、低消費電力、低コストで環境負荷のないサーモモジュールが有用となる。こうしたサーモモジュールの長所をアピールしながら、自動運転を見据えた各種システムについても、提案を進めていく。

磁性流体の将来的な適用
 たとえば、ゲル状材料と液体状の磁性流体を組み合わせた材料を、作動媒体として適用する、柔らかいアクチュエーターの研究開発も大学などと共同で進める。筋肉デバイスなどのロボット分野をイメージしているが、エア/油圧アクチュエーターで必要とされるコンプレッサーなどを必要とせず、軽量でコンパクトなシステムが組めることから、自動車でも適用できるアプリケーションは少なくないと見ている。また、磁性流体は、リニア振動デバイスへの適用実績も増えてきており、自動車分野に限らないが、リニア振動デバイスを活用したハプティクス(触覚技術)デバイスとしての適用も進んでいる。

 フェローテックでは、サーモモジュールや磁性流体、DCB基板(セラミックス基板に銅板を直接接合した絶縁放熱製品)を中心とした、独自技術のアプリケーションの拡大によって、自動車分野向けの売上高を現在の50億円から3年間で200億円に拡大する計画である。

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