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やわらか3D共創コンソーシアム、やわらかものづくり研究会を開催

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 やわらか3D共創コンソーシアム(会長:古川英光 山形大学教授)は11月26日、東京都港区の品川インターシティで、専門の異なるものづくりに関する有識者を迎え、急速に進展し続ける製造のデジタル化について、先進的な事例を研究し、今後の展望を考える場とするとともに、その重要性と3D共創コンソーシアムの今後の取組みについてのビジョンを広く発信していくことを目的に、「やわらかものづくり研究会-ゲル製品に最適な品質評価と規格・標準化の在り方とは-」を開催した。当日は以下のとおり講演が行われた。
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・基調講演1「産業用IoTとAIが導く製造業の未来」川野俊充氏(ベッコフオートメーション)…製造業の競争力を高めるため量産品と同じ品質、コスト、納期でカスタムメード品を高付加価値に提供するという、3Dプリンティングとコンセプトを同じくする“マスカスタマイゼーション”を目指す「インダストリー4.0」の変遷について紹介。そのコンポーネントとして、規格に準拠した「管理シェル」が準備されていればメーカーを問わず自由に組み合わせて基幹系システムにつなぐことができ、CAD/CAMでもPLMでも様々なアプリケーションをメーカーによらず組み合わせて使えるようになると説明。同社製の管理シェルなどを用いて、サイバー・フィジカル・システムのデジタルデータ連結におけるプロファイルの標準化と、人工知能(AI)を活用した金属加工における最適加工条件の自動生成と加工プログラムの流通モデル(オープン化)の創出を目的に、サプライチェーン内で生産情報を共有化し市場に合わせたフレキシブルな生産体制を構築するとともに、熟練者に頼る最適加工条件の創出をシステム化し注文から加工機までを一気通貫につなぐ既存工場の「スマート工場化」への実証事業の事例を紹介。インダストリー4.0におけるAIの役割は単純労働や匠の技を自動化し、ヒトを創造的・知的活動へと向かわせるもの、と総括した。

・基調講演2「3Dチョコレートで創るSweet & Smile」柳澤一嘉氏(ハンター製菓)…チョコレート製造は装置産業であり、装置があれば誰でもどこでも作れるが、モールドが重要要素となる。ポリカーボネートのモールドは高価で、PETのブロー成形はコストを抑えられるが立体にできない、スピナーでは高価なモールドとなる上、アンダーテーパーでは抜けない、分割の型によるパーティングライン(分割線)が出るといったハードモールドでの問題があった。他方で、シリコンモールドなどのソフトモールドであればアンダーテーパーが抜けるものの、元型の作製に費用と時間がかかっていた。そこで同社では3Dプリンタでソフトモールドを製作。3Dプリンタで製作したソフトモールドはシンゴジラなどで各種の動きを出したいといった多様なユーザーニーズにスピード感をもって対応して、迅速に元型を作れるなどのメリットを挙げた。音楽や絵画は心を落ち着かせるが、不要不急のチョコレートは感動して購入してもらう性質のもののため差別化が必要で、3Dプリンティングは、会社の規模に合わせて差別化が図れる、優れた技術であるとした。熱では溶けないが口に入れると溶けるといった機能性を持たせつつ、高齢化に対応して美容にも良い成分を配合したり、岡山の葡萄や白桃、北海道のコーンなど各地の素材を使って地産地消のチョコレートを作るなど、他社にできない、感動を与える製品づくりを進めていきたいと語った。

・基調講演3「歯科医療における3Dプリンタ技術応用の実際そして未来」金高弘恭氏(東北大学)…近年、3Dスキャナや3Dプリンタによる3Dデジタル技術の発達が著しく、歯科領域でもそれらの新しい技術が応用され、歯科技工作業の効率化を可能とする歯科技工用デジタルシステムが開発されている。人体の各種パーツは個人差が大きいため、個別の寸法に対応できる3Dプリンタが最適として、3Dプリンティングした顎の骨のインプラントへの使用や、人工骨やオーダーメイド補聴器、義手や義足など、医療・歯科分野における3Dプリンタの各種の活用例を紹介した。光硬化性アクリル系樹脂を10~100μmピッチで積層造形が可能で、造形用データの段差が生じない滑らかな輪郭の物体が造形できる「液槽光重合方式の3Dプリンタ技術」を紹介、同技術でテンポラリーブリッジやテンポラリークラウン、歯列模型など様々な歯科材料が製作できることや、それらの臨床的有用性の検討を進めた評価結果を示した。最後に、「3Dプリンタ技術は硬いものからやわらかいものまで応用可能で、今後、医療分野でのさらなる展開が期待できる」、と総括した。

・基調講演4「プロトタイプデザインラボ(面白工場)~ヘルスケアDIYビレッジ構想~」小野寺忠司氏(山形大学)…イノベーションを持ったイノベーティブな企業、起業家や研究者を呼び寄せて、新しい頭脳に教育と経験の場として将来の新たなイノベーションを発掘していくためのラボを作り上げ、ヘルスケアやIoTものづくりに特化した国際的な拠点を目指すプロトタイプデザインラボを山形県長井市に設ける構想を紹介した。共創のイメージとしては、場の提供・整備をしつつ、持ち寄り型の機器で、たとえば、癒しや見守り機能(IoT)、リラクゼーション、買い物・注文機能などを持たせた「3Dゲル技術によるソフトマターロボティクスの価値事業化」に取り組む。検討依頼事項として、全員持ち寄り型の3Dデジタル製造研究への参加や、試作のために面白工場の利用を希望する地元企業との交渉、専属外国人研究員の雇用や住居の提供、米国の医工連携で有名なジョンズホプキンス大学からの外国人研究員の滞在先の提供などを挙げた。「面白工場にぜひアイデアを持ち寄っていただき、喧々諤々と意見を戦わせて、世界を変えるくらいのイノベーションを起こしてほしい」と締めくくった。

・ディスカッション「3Dゲルプリンティングによる製品に最適な品質評価と規格・標準化の在り方について」古川英光氏(山形大学)…食品、医療(接着)、ゲル(ゴム、エラストマー)、モビリティ(金属・複合材料)、ロボットの分野でそれぞれ設けられた、3D食品部会、次世代メディカル部会、3Dゲル部会、3D金属高分子複合部会、ソフトマターロボティクス部会の五つの部会からなるコンソーシアム活動に関して、10年以内に世界に伍する国際研究開発拠点となるというスケジュール感を示す一方で、デジタル製造のスピード感は早く、やわらかい材料でのデジタル製造もここ2~3年が勝負として、3Dプリンタ装置、材料、OS、データ、マーケット、工房などを提供するプラットフォーマーとなるべく、プラットフォームを構築する技術を確立していこうと呼びかけた。また、3Dプリンタはまだ「ものづくりのウォークマン」であって、「ものづくりの(ウォークマンがデジタル化された)iPod」になるには標準化が必須として、標準化に向けた取組みの一つとして、同氏がプログラムマネージャーとなって取り組む2019年「NEDO先導研究プログラム (AIを用いて)造形しながらリアルタイムで計測および修正する革新的3D検査造形装置(やわらかい材料の3D解析)」を申請中であり、プログラムへの積極的な参画を呼び掛けた。

古川会長古川会長

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