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 過給器(ターボチャージャー)は二酸化炭素(CO2)排出規制からも、最近のガソリン高騰からも、自動車への搭載が必須となると見られている省燃費技術だ。米ハネウエル社、米ボルグワーナー社に次いで世界3位の三菱重工業では2011年度までに年間生産能力を07年比9割増の690万台に引き上げると発表した。ディーゼル車への過給器装着率は現在の約6割から、欧州の次期排ガス規制「ユーロ5」が施行される2010年には100%近くまで高まるとされ、さらにガソリン車でも省燃費技術として採用が進んできていることから、06年には1,800万台強だった世界需要が、2011年には3,000万台超という予測も打ち出されている。

 過給器は、排気ガスのエネルギー(温度・圧力)を利用してタービンを高速回転させ、その回転力で遠心式圧縮機を駆動することで、圧縮した空気をエンジン内に送り込む。これにより、内燃機関本来の吸気量を超える混合気を吸入・爆発させることで、見かけの排気量を超える出力を得る仕組み。近年のガソリンエンジンでの過給器の採用は、同等の出力、トルクをより小さい排気量のエンジンで実現し、燃費の向上を目指すという「ダウンサイジングコンセプト」に基づくものである。たとえば、フォルクスワーゲン社のTSIエンジンはスーパーチャージャーとターボチャージャーという二つの過給器を圧縮比の高い筒内直接燃料噴射(直噴)エンジンと組み合わせた結果、2.4Lエンジンに匹敵する最高出力125kW(170PS)/6,000min-1(rpm)、最大トルク240Nm(24.5?m)/1,500?4,750min-1の性能と10・15モード燃費14?/Lの低燃費を1.4Lエンジンで達成している。

 過給器では通常、回転軸の一端にタービン(タービンホイール)が、他端にコンプレッサ(コンプレッサホイール)が設けられたもので、600℃強?900℃近い高温・高圧の排気ガスを受けて回転力に変えるためのタービンホイールは、たとえば日立金属の手がけるものでは耐熱性のニッケル合金製で、真空下で溶解・鋳造することで耐久性を高めているという。

 タービンの回転速度は自動車用ガソリンエンジンなど小型のもので200,000?250,000min-1と高速で、タービン軸受には通常、エンジンオイルの圧送によるフローティングメタル式すべり軸受が使われる。転がり軸受は抵抗が小さく回転安定性に優れるという利点はあるが、軸受配置空間が高温となることから潤滑不良が起こりやすいといった問題などからほとんど使用されていなかった。しかし、近年はセラミック鋼球を使用したハイブリッド転がり軸受などが、セラミック玉の優れた高速性や耐熱性、厳しい潤滑条件下での摩擦特性などから、採用が始まっている。