第19回 家事支援ロボットが本格化

第19回 家事支援ロボットが本格化 kat 2008年11月30日(日曜日)

提供:東京大学IRT研究機構提供:東京大学IRT研究機構 東京大学IRT研究機構が、掃除や洗濯をこなす生活支援ロボット「ホームアシスタント・ロボット(AR)」を開発した。同機構は、トヨタ自動車、オリンパス、セガ、凸版印刷、富士通研究所、パナソニック、三菱重工業が参画、ロボティクス(RT)と情報技術(IT)を組み合わせた「IRT」により少子高齢社会の問題解決を目指すもの。

 今回開発したARは、車輪移動型で腰軸を持った双腕構成のロボット。サイズは幅650?×奥行き770?×高さ1,550?で、重量は130kg。広角ステレオカメラ、望遠ステレオカメラ、超広角カメラ(全方位カメラ)のほか、操作用の6軸力センサー、レーザーレンジファインダー、超音波センサーを備え周辺環境と自分の位置を認識、駆動輪2、補助輪4の計6個の車輪で移動し、首と頭部3、腕7×2、手指2×3×2、腰1、移動部2の32自由度で掃除や洗濯、食事の後片付けなどの作業を行う。動力源はバッテリで、稼働時間は30分?1時間程度。

 手のひらをシャツに押しつけて、手首部分に搭載した6軸力センサーで確認。その後、3本の指を閉じてシャツを持ち上げる。洗濯機のところまで運び、ボタンを押して洗濯機のドアをオープン、洗濯機にシャツを入れたあとドアを閉め、スイッチを押して作動させる。

 6軸センサーは、XYZ3軸に加えこれら3方向にかかる回転(ひねり)の6軸の力を検知する。これにより対象物の形状や重さなどの情報を把握、握る力を制御する。ARのハンド機構の詳細は明らかにしていないが、ハンドの動きを実現するメカとしては、手のひら部分にモータを置き、回転速度の速いモータ軸を減速したりモータトルクを大きくしたりするハーモニックドライブなどの減速機を経て、リンク機構が指の関節を動かすものがある。

 ハーモニックドライブとは内側にある楕円形のウェーブジェネレータによって強制的に変形を起こすフレクスプラインと、それにかみ合うサーキュラ・スプラインと呼ぶ内接歯車から構成される。たとえばフレクスプラインの歯数が98枚、サーキュラ・スプラインの歯数が100枚の場合、2回分フレクスプラインが反時計回りに回転する。つまり2/100=1/50の減速費が得られる。コンパクトな減速機構としてロボットに多用されている。

 IRT研究機構IRTシステム研究部門部門長の稲葉雅幸教授によると、ARの研究成果のポイントとして、特に変形するため操作が難しい柔軟物の認識と操作、またこれまでの成功の記憶に基づいて失敗したことを認識できる点が新しく、家庭内でロボットが使われる上で非常に大きな技術だとしている。

 サービスロボットの市場は2025年に6兆円以上と予測されており、最近のニュースでは、米アイロボット社の掃除ロボ「ルンバ」が世界で250万台を売り上げたと報じられた。アイザック・アシモフ博士のロボットもので最初に登場するのは子守のロボットだが、いよいよ家庭で人に奉仕するロボットがお目見えする予感が高まってきた。