第56回 レアメタル確保に向け海洋資源開発ロボ開発へ

第56回 レアメタル確保に向け海洋資源開発ロボ開発へ kat 2009年8月31日(月曜日)

提供:JAMSTEC。写真は、自律型無人探査機と同じ原理の深海巡航探査機「うらしま」提供:JAMSTEC。写真は、自律型無人探査機と同じ原理の深海巡航探査機「うらしま」 経済産業省は先ごろ、「レアメタル確保戦略」を取りまとめた。ハイブリッド車モータ用など高性能磁石に使われるレアアースやリチウムイオン電池のリチウムやコバルト、液晶画面に使われるインジウムなど、レアメタルはわが国の誇る工業製品の製造に必要不可欠な素材だが、中国の急速な経済成長などにより国際的な需給逼迫や供給障害が発生する可能性が懸念されている。今回の戦略では、単位あたりのレアメタル含有量の多い携帯電話、デジタルカメラ等の小型家電、超硬工具などの使用済み製品について、リサイクル・システムの構築や既存システムを活用した回収促進に着手するとともに、リサイクル技術の研究開発を通じたレアメタルの回収・再利用といった 「リサイクル」のほか、「海外資源確保」、「代替材料開発」、「備蓄」の四つの施策とともに、資源国との多面的関係の強化、人材育成、技術力の強化、ユーザーを含むレアメタル・サプライチェーン産業の一体的取組といった関連する対策に取り組むことなどを謳っている。

 こうした中、省資源国のわが国ながら、周辺の深海底では、地下深部に浸透した海水がマグマなどにより熱せられ海底に噴き出し、それが冷却される過程で熱水中の銅や鉛、亜鉛、金、銀などが大量に沈殿して作られた海底熱水鉱床や、コバルト・リッチ・クラストなどの鉱物資源やメタンハイドレートなどのエネルギー資源が多量に埋蔵されている可能性が明らかになってきており、海洋資源の探査に注目が集まってきている。海洋研究開発機構(JAMSTEC)では海洋資源の本格探査に向け、実証試験専用探査ロボットの開発に乗り出している。自動的に潜航する「自律型」と「遠隔操作型」の2タイプの探査ロボットの開発と探査ロボットを搭載する支援母船の改造で40億円の予算を計上した。
 海底熱水鉱床などの資源探査は、海底地形や火山活動分布により、その存在地域を推定する方法が一般的。無人探査ロボットは、未発見の海底熱水鉱床を広域で効率的に探査するほか、鉱床の資源量を高精度で把握できる。

 自律型は、機体に探査センサや内蔵したコンピュータにあらかじめ設定したプログラムで位置を計算しながら航走する。また、遠隔操作型は機体から垂らしたケーブル先端のセンサを探査に応じて自由に交換できるほか、鉱物を含む試料を採取する機能を持つ。現行の潜航最大深度3,500kmの深海探査機「うらしま」をベースに、水深4,500km目標など探査機能を高めていく。

提供:JAMSTEC提供:JAMSTEC たとえば「うらしま」の推進器はモータ、減速機、プロペラで構成されているが、大水深での高い水圧に耐え、できる限り小型軽量とするため、モータと減速機を収納した容器を油で満たし、圧力調整用ブラダを設け、海水の圧力と容器内部が均等になるような方式としている。音響通信の障害だった減速機からの機械ノイズが発生しないよう、特殊な斜歯歯車を製作し使用しているが、前方障害物探査ソーナーや高度ソーナー等の音響機器を多用していることからは、さらなる音響ノイズの発生をねらって燃料電池の搭載も検討されているという。

 海洋研究開発機構ではこのほか、日産自動車と共同で、日産が一般車の車庫入れや縦列駐車を助けるために実用化した技術をベースに、海底探査機の前後左右と下側が見渡せる画像認識技術の開発を開始、今後10年をめどに商業化をめざすとしている。レアメタル確保に向けた海洋ロボ開発では、先述の歯車の低ノイズ化など機械要素やシステムの技術の転用もできそうである。わが国産業発展を支える資源開発のための研究開発の進展に期待したい。