第175回 第15回M-Tech関西が開催、機械要素を支える表面改質技術が一堂に

第175回 第15回M-Tech関西が開催、機械要素を支える表面改質技術が一堂に コダマ 2012年10月9日(火曜日)

M-Tech関西のもようM-Tech関西のもよう 「第15回 関西 機械要素技術展(関西 機械要素技術展(M-Tech関西)が10月3日~5日、大阪市のインテックス大阪で開催された。同展は、軸受や直動案内、歯車などの機械要素や、機械要素を構成する材料・表面改質・加工技術を一堂に集めた西日本最大の専門技術展。

 ベアリングなどの機械要素では、低摩擦にすることで自動車であれば燃費向上に、産業機械であれば省エネルギー・省電力につながる。また耐摩耗性を高めることで機械の長寿命化が図れるほか、同等の耐久性であれば機器のコンパクト化が可能になる。

 今回の出展ではそうしたベアリングや直動案内、歯車、シール部品などの最新技術・製品が出展されたのに加えて、それら機械要素の低摩擦化や耐摩耗性向上を実現する各種の表面改質技術も紹介された。

金属部品の低摩擦化・耐摩耗性向上を図る

 日本アイ・ティ・エフは、バルブリフターなど自動車部品で実績のある水素フリーDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティング「HADLC」のほか、高硬度で、耐熱、耐摩耗性に優れるクロム系コーティング「IAX」などを展示した。

 丸紅情報システムズは、独自のパルスアークPVD方式により、高硬度・低摩擦で相手攻撃性の低い水素フリーDLCコーティング「ULFコート」の受託成膜サービスを提案、切削工具で累計1000万本のコーティング実績を持つ量産品対応であることを強調した。さらに熱CVD方式による、高硬度で高い密着性と耐摩耗性を持つダイヤモンドコーティング「ダイヤモンドコート」の受託成膜サービスについて紹介した。

 また、ナノコート・ティーエスは、軽量化による燃費向上を目的に採用が進むアルミ合金向けに、摺動特性を向上するメタル(タングステン)含有DLCコーティング「セルテスDT」を提案した。

 このアルミ・アルミ合金向けとしてアルバックテクノは、硬質アルマイトとフッ素樹脂のシナジー効果で耐摩耗性向上・摺動性向上・かじり防止・スティックスリップの減少等の機械特性を持たせる高機能複合皮膜「タフラム」を、鉄、ステンレス、銅、アルミ合金に対しては、無電解ニッケルにフッ素樹脂を複合させることで、高硬度で耐摩耗性・すべり性・かじり防止・非粘着性・耐候性・耐油性等に優れる「ニダックス」などを紹介した。

高分子材料の機械的特性を改善する

 空気圧シリンダーなどに使われる往復運動用シールではゴムや樹脂材料が用いられるが、新興国向けなどで使用頻度が高くなるにつれて、こうしたシール部品の摺動特性や耐久性を改善するニーズが高まってきている。

 こうしたニーズに対して、ナノコート・ティーエスは、ゴム部品の摺動特性を向上できるDLCコーティング「セルテスDC-R」を紹介、Oリング等のシール製品の凝着防止・耐摩耗性向上を提案した。

 また、住鉱潤滑剤は、密着性に優れる樹脂(バインダー)に低摩擦性に優れるPTFE等の固体潤滑剤を配合した潤滑塗料で、部品へ塗布して硬化させることでドライ被膜を形成する「Moltiacoat(モルティアコート)」を紹介した。素材に対する被膜の密着性が良好なため、柔軟性のあるゴム/プラスチック部品においても被膜が追従するため、はく離が少なく、優れた潤滑効果を持続的に発揮するという。

金型の耐久性・離型性を高める

 金型向けでも、部品の精度や品質を高める離型性や生産性を高める耐久性などを改善する表面改質技術が、多数紹介された。

 清水電設工業と浅井産業は、PVDを核に各種コーティング技術を提示、S-PVD、TiAlN、TCの利点を活かし、さらなる高硬度、高耐熱性、潤滑性を付与する「ZERO-I(ゼロワン)コーティング)では、優れた耐摩耗性・耐熱性の付与で金型の長寿命化、生産性向上を謳った。また、日本コーティングセンターは、耐熱性と潤滑性、CrNよりも高い耐摩耗性を兼ね備えた新しい金型用被膜「ダイモスコート」などの処理サンプルを展示した。

 我が国の機械要素メーカーも例に漏れず、新興国のメーカーとの過酷な競争にさらされているが、今回紹介された表面改質技術は機械要素の表面に高付加価値な特性を付与し、商品の差別化を図る技術だ。今回のような展示会を通じて、機械要素メーカーと表面改質技術の提供者が共同で各種ニーズに取り組み、世界的に競争力の高い商品技術が生み出されていくことを期待したい。