第191回~第200回

第193回 JASIS2014開催、新産業の創出を支える試験・評価機器

JASIS2014のもようJASIS2014のもよう 日本分析機器工業会と日本科学機器協会は9月3日~5日、千葉市の幕張メッセ国際展示場で、アジア最大の分析展/科学機器展「JASIS2014」を開催した。今回は「未来発見。-Discover the Future-」をテーマに、医療やライフサイエンス、環境など、我が国の成長産業の創出につなげるための材料や表面改質層の開発を支える分析装置や試験装置などが多数展示された。

新東科学のブース新東科学のブース 材料や膜の摩擦・摩耗を低減することで省エネ・省資源につながる技術が盛んに開発されているが、この特性(トライボロジー特性)を評価する摩擦摩耗試験機では、新東科学やアントンパール・ジャパンなどが出品した。新東科学では汎用機として「トライボギア TYPE:14」を紹介。同品はアタッチメントを様々に変更できることから、摩擦摩耗試験だけでなく、簡単な引っ張り試験やスクラッチ試験などに対応しており、比較的安価に様々な試験を高精度に実施できるとした。また、同社では摩擦摩耗試験機の専門メーカーとして60年以上の実績を強みに受託試験を開始。正確な測定技術とともに低価格で明快な料金体系を打ち出し、自社技術の提供を行っている点などを周知した。

大塚電子のブース大塚電子のブース 低摩擦や耐摩耗性というトライボロジー特性に優れるコーティングの一つに、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜があるが、大塚電子では、光干渉法と自社製高精度分光光度計により、DLC膜の非接触・非破壊、高速・高精度の膜厚測定を可能にした光干渉式膜厚計「FE-3000D」を出展した。独自の解析手法「複数点解析」を用いて、あらかじめ用意した厚みの異なる複数サンプルを同時解析することで、従来に比べ高精度にn(屈折率)k(消衰係数)を求めることができる。また、測定波長範囲を変えることで、極薄膜から超厚膜までの幅広い膜厚が測定できる。さらに、独自の顕微鏡光学系を採用することで、モニター・サンプルではなく、工具・ギヤ・シャフトなど、三次元形状のあるサンプルに被覆したDLC膜の実測定を可能にしている。

 各種の機能性薄膜が登場する中で、母材の物性に影響されず、薄膜の機械的特性のみを評価する手法にナノインデンテーション法があるが、この評価装置であるナノインデンターはオミクロン ナノテクノロジー ジャパンやアントンパール・ジャパン、東陽テクニカなどから出品された。

オミクロンナノテクノロジー ジャパンのブースオミクロンナノテクノロジー ジャパンのブース オミクロン ナノテクノロジー ジャパンは、フロアノイズ(装置設置時の測定ノイズ)の30nN以下を実現し、低荷重領域でも安定したデータの取得ができるHysitron社製の「TI950 Tribo Indenter」の実機を展示。SPM(走査プローブ顕微鏡)機能による表面形状像、ナノインデンテーションによる硬さ・弾性率、ナノスクラッチによる膜の密着強度、ナノウェアによる耐摩擦特性の測定機能を標準装備し、600℃以上の加熱測定が可能な高温ナノインデンテーション装置としてPRを行った。

アントンパール・ジャパンのブースアントンパール・ジャパンのブース また、アントンパール・ジャパンでは2012年末に買収したCSM Instruments(現CSM TriTec)製のウルトラナノインデンテーションテスターを展示した。現在、1000℃以上の高温や―50℃といった低温に対応する機種やを開発中であることや、近年開発された「バイオウルトラナノインデンテーションテスター(BioUNHT)」が、超低荷重と大きな深さ方向の変位が可能なことから、バイオ材料だけでなくソフトマテリアルの評価が可能であることなどを紹介した。

日本電子のブース日本電子のブース 日本電子では、こうした試験・評価装置を多数取り揃え、たとえば「陽極酸化膜の分析ソリューション」として提案した。AEM(分析電子顕微鏡)やXPS(光電子分光装置)による表面・界面分析、NMR(核磁気共鳴装置)による化学状態分析、MS(質量分析計)による質量分析、FIB(集束イオンビーム加工観察装置)による資料前処理技術、FE-SEM(走査電子顕微鏡)による表面構造解析、TEM(透過電子顕微鏡)による断面構造解析といった様々な課題を解決するための装置群、アプリケーション等のトータルソリューションを提供するとした。

 新産業、たとえば医療産業を、安倍政権は重要な成長産業と位置付け、育成すべく各種の政策を進めている。そうした新産業創出の基盤となる材料および表面改質層の開発では、紹介したような試験・評価機器による、材料・表面改質層の信頼性を裏付ける評価データが欠かせない。各種の試験・評価機器を有効に活用していくことで、わが国の成長産業となる新産業の創出につながることに期待したい。

第194回 JIMTOF2014に見る、加工の高効率・高精度化を支える機械要素・表面改質技術

「JIMTOF2014」会場のもよう会場のもよう 10月30日~11月4日、東京・有明の東京ビッグサイトで「第27回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2014)」が開催、切削・研削・研磨・プレス加工などの工作機械をはじめ、直動案内機器や軸受などの工作機器、工具、工具・金型のコーティング、加工油剤などの関連技術が一堂に会した。我が国ものづくりの競争力を高める加工の高精度や高効率加工、省エネルギー、低コスト化を実現する多軸機や複合機、その可動部を支える軸受や直動案内などの機械要素技術、切削工具や金型の耐久性を高め加工品位を高める各種コーティング技術も多数出展された。

NTN「工作機械主軸用空冷間座付軸受」NTN「工作機械主軸用空冷間座付軸受」 加工の高効率化は、工作機械において工具主軸の高速回転と送りの高速化で実現される。工作機械の主軸は、難削材や金型、複雑形状部品、医療機器部品などの加工で、高剛性・高速回転が求められる。特に近年の工作機械は多様なワークに対応するため、1台で複数の加工機能を持つ5軸加工機や複合加工機が主流で、加工機能の向上に伴い、主軸用軸受には剛性をより高めた超高速回転のニーズが高まっている。これに対しNTNでは「工作機械主軸用空冷間座付軸受」を開発、材料や熱処理の改良、内部設計の変更、潤滑面の改善などの従来のアプローチではなく、主軸の発熱低減に着目し、独自の空冷技術を用いた「空冷間座」を適用している。これにより、内外輪の温度差を抑制することができ、従来品(超高速アンギュラ玉軸受)と比べ高速回転性能が20%向上、エアオイル潤滑・定位置予圧でdmn値210万を達成し、世界最高水準の高速回転性能を実現した。軸受内径φ70、回転速度23000min-1(dmn値210万)において、従来品は組み込み後軸受内部に予圧を与えることができなかったが、開発品は最大1300Nの予圧を確保でき、組み込み時における主軸の剛性を大幅に高めることで、幅広い速度域において加工性能の向上に貢献する。さらに、主軸を冷却するエアにより発生する騒音については、「空冷間座」の内部設計を工夫することで騒音値の上昇を抑え、従来の「環境対応型エアオイル潤滑アンギュラ玉軸受」と同水準を維持している。

日本精工「工作機械用高機能ボールねじ」日本精工「工作機械用高機能ボールねじ」 送りの高速化(高速送り)では、近年、ボールねじ自体の発熱を低減することで強制冷却を省略したい、ボールねじの運動誤差を小さくしてさらなる高精度に対応したいという要望が増えてきた。これに対し日本精工では、設計面、生産技術面からボールねじの予圧・剛性・発熱量・温度上昇のバランスを最適化した「工作機械用高機能ボールねじ」の新技術を開発した。剛性を維持しつつ発熱を低減して温度上昇を約20%低減するとともに、ボールねじナットの位置の違いによる運動誤差を低減した。これにより、発熱量と運動誤差を低減することで工作機械の位置決め精度の向上が可能にしている。

 工作機械側でこうした主軸や送りの高速・高精度・高剛性化が図られているわけだが、同様に工作機械スピンドルの先端で各種材料に対して加工を施すドリルやエンドミルなどの加工工具にもビビリの抑制や、長寿命・高能率加工に最適な耐摩耗性向上が要求される。 

 ユニオンツールは、自社のφ0.1のマイクロドリルの潤滑性・耐摩耗性を高めたDLCコート「ウルフコート」と、ダイヤモンドコート「UDC」の工具、金型のほか、各種機械要素などへの受託加工サービスをPRした。また不二越は、潤滑性と耐熱性・耐摩耗性を高め、ドライ加工でも高速高能率・長寿命化を図るアクアEXコートを施し、切削性能を向上させた超硬ドリルやエンドミルなどを出展した。アクアEXコートは超アルミリッチAl-Cr-Ti系コーティングで1100℃での耐酸化性を従来TiAlN系コーティングに対し3倍に向上させたことで超高速加工でも優れた耐摩耗性と耐熱性を実現したほか、最表層に特殊潤滑膜を施すことで切りくずとの摩擦抵抗を低減、耐溶着性を大幅に低減した。さらに複層構造膜の採用により、膜強度がアップ、工具の耐チッピング性の向上にもつながっている。

 こうした耐摩耗性や潤滑性を付与した表面改質を施した製品が各工具メーカーから展示される一方、各種コーティングの受託加工メーカーや成膜装置メーカーも出展した。

 オンワード技研は、パンチなどの金型を想定した超高硬度DLC膜「AC-X・W」を紹介。硬さ60~70GPaと高硬度で膜厚1μmを実現し、アルミニウムや銅加工の耐凝着対策に有効であるとした。12月以降に受託加工の受付を開始するという。アヤボでは、切削工具や金型などに対して、コーティングの前処理である研削・研磨工程とPVDコーティング工程を一貫生産する「nano warp」を提案。このシステムにより短納期・低コスト・高品質を実現する。PVDコーティングは、アークイオンプレーティング、ホロカソード、スパッタリングと三種の成膜方式を用意しており、顧客の要望に適したコーティングを選定する。

日本エリコンバルザースのブース「INGENIA」を展示した日本エリコンバルザースのブース 日本エリコンバルザースは、マイクロドリルの寿命を飛躍的に向上する同社最新コーティングの「BALIQシリーズ」を施した各種工具を展示したほか、設置スペースがコンパクトで、高速、高精度、高柔軟性なコーティングを実現するシステム「INGENIA」の実機を展示。同装置では、同社のHIPIMS(High Power Impulse Magnetron Sputtering)ソリューションであるS3p(拡張可能なパルス出力プラズマ)テクノロジーにより、表面が滑らかで高密度のコーティングを実現し、特許技術である万能マグネットシステムVMSにより安定したコーティング時間と高品質のコーティングを提供する。

IHIグループのブースIHIグループのブース IHIグループは、IHIイオンボンドがCVD、CVA、PVDおよびPA-CVD装置のラインアップを提案、切削工具・金型・各種機械部品・航空エンジン部品・医療機器などの性能向上を図るコーティングサービスを紹介した。装置販売においては、IHI機械システムが真空・加圧脱脂焼結炉、真空浸炭炉、真空脱脂洗浄機、真空炉などの熱処理関連装置、IHIハウザーコーティングがPVD/PACVD成膜装置Flexicoatシリーズと、工具・金型分野で適用されている最新のアーク成膜技術「CARC+」を中心にポスター展示と工具、自動車部品のコーティングサンプルも展示した。

 今回のJIMTOF2014では、航空機、医療、エネルギーなど成長分野のアプリケーションに対応する工作機械や工具・金型などが多数紹介される一方で、海外生産の進む中で求められるコスト低減に対応する生産性向上の要素技術が数多く出展された。こうした新分野などでの各種要求に対応する機械要素技術や表面改質技術など基盤技術の技術革新がますます求められてきている。