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第08回 食の安全システムを覆した「事故米」

 大阪の加工米販売業「三笠フーズ」が、最も強い天然の発がん性物質といわれるカビ毒アフラトキシンや有機リン系殺虫剤メタミドホスに汚染された「事故米」を食用として流通させていた。食品衛生法では有害物質を含んだ食品は流通が禁止されているため、国ではこうした事故米を食用ではなく、接着剤など工業用原料に限定して販売を認めている。ところが三笠フーズでは、買い取った事故米を焼酎のほか、せんべいや和菓子の原料として転売していた。

 食品・飲料の製造・加工機械では、食の安全を脅かす異物混入を徹底的に防ぐ取組みがなされている。たとえば今回事故米の使われた焼酎の精製では、ポンプで原酒を加圧する工程がある。往復動ポンプにはシリンダーとロッドにそれぞれシール(パッキン)があるが、摩耗はゼロとはいえず摩耗粉という異物が発生する可能性もあることから、シール材には食品衛生法に適合した材料が使われる。液中では潤滑剤が使えないため、自己潤滑性があるPTFEや超高分子量ポリエチレンなどの樹脂シールも使われる。

 また、せんべい焼成機で型押しするスタンパーや裏返す機構などの揺動・回転部分に使われるベアリングにも、普通のSUJ2軸受鋼は使えない。水分にさらされ錆が発生すれば異物として混入する恐れがあるためだ。そこでマルテンサイト系ステンレスなど錆びにくい材料が使われる。軸受には通常グリースが封入されるが、HACCP(危険分析重要管理点)は潤滑剤に関し、(1)使用しない(2)漏れない・触れない対策をとる(3)偶発的接触が許容される潤滑剤を使用するという考え方を示している。このうち、軸受に封入されるグリースには、NSF(国際衛生財団)が設定するカテゴリーのH1認証を受けた食品工場用潤滑剤を使うことが一般的になっている。H1認証潤滑剤は、食品が接触する箇所での使用を認められたものである。完全に水中などで使用される軸受には自己潤滑材料が使われる。樹脂製転がり軸受の場合では、内輪、外輪にPPSやポリイミドが、転動体にガラスやセラミックスが使われるといった具合だ。保持器に食品機械用グリースと自己潤滑性樹脂を使った食品機械用軸受(提供:NTN)

 直動転がり案内もボールベアリングと同様の考え方となるが、中には米ぬかを使った「RBセラミックス」を使ってオイルフリー、耐摩耗、安全衛生を実現したすべり案内も登場している。

 このように、稼働中に異物を混入させない取組みが事細かになされる中で、米が利用方法によって価格が極端に変わるという仕組み(せんべいや焼酎原料などの加工用米として流通する場合には5万円、工業用のりとして販売する場合は高くても1万円など)を利用した業者が、意図的に有害物質の混入した原料を食品加工の現場に流した。

 先述の食品加工用潤滑剤の本格的な普及も国内では端緒についたばかりだ。食品加工関係者の地道な努力を踏みにじる、事故米転売業者の無節操さには怒りを覚える。食の安全を脅かす悪徳がまかり通ることのない、万全なチェック機能の働くことを願っている。