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第09回 防災の月に、地震対策を見る

 9月1日は、1923年9月1日の関東大震災に因んで制定された「防災の日」だった。近年、地震予測の技術が進んでいるらしい。海溝型の大地震は50?100年の周期で同じプレートで起こることから、30年以内の震度5以上の大地震発生をほぼ正確に予測できるという。しかしマグニチュード(M)7.2を記録した岩手・宮城内陸地震のような、1000から1万年周期で起こると言われる内陸活断層に起因する地震については、30年というスパンでの評価予測は難しく、また2,000ヵ所あるという活断層の調査も現時点で109ヵ所と進んでいない。

 予測の精度向上には引き続き取り組むべきだが、地震が起こったときの対策も必要だ。特に国内では戸建てで1,000万戸、マンションで150万戸で耐震性が不十分とされ、住宅の耐久性を高めるべく、構造そのものを頑強にし揺れに備える「耐震」、住宅土台部分に入れた装置で地震の衝撃をのがす「免震」などの施工が急ピッチで進められている。なかでも免震機構の採用はめざましい。

 1995年の兵庫県南部地震で多くの民家を倒壊させたのは、直下型地震に多く見られる周期1秒程度の地震波。建物が揺れて往復するのにかかる時間を「建物の固有周期」というが、地震波の周期と建物の固有周期が一致すると、揺れが増幅される「共振現象」が起こる。建物が倒れなくても家具が倒れる可能性はきわめて高い。

 これに対し免震機構は、地盤に固定した軌道台の上を建物が転がりやすべりの機構で軽く移動できるようにするものだ。地面が大きく揺れても、免震機構のうえに載った建物は置き去りにされた格好になり、結果的に揺れ(移動量)が小さくなる。つまり免震構造をとることで建物自体の揺れを少なくし、建物の被害や家具の転倒など、屋内の被害を劇的に減らせる。


 たとえばTHKの免震システムでは、直動転がり案内「LMガイド」がX軸、Y軸ともに2列にして井桁に組み合わせた形。理論的に、地震動による横荷重が同じであれば免震装置の摩擦係数が低いほど建物に伝わる荷重(揺れ)は小さくなる。LMガイドは摩擦係数0.05?0.08と軽く動くため、この上に載った建物は地面の揺れに置き去りにされた格好で固有周期が延長され、揺れが小さくなる。堤供:THK堤供:THK


 サーバーなど重要な機器の免震も必要だ。これに対して不二越の免震機構の一つでは、積載物を載せるための上プレートと床面に設置される下プレートの間に、単球式転がり支承を配置、地震の揺れに対してプレートが捻れないように、捻れ防止機能を有する独自のオルダム機構を採用し、この構造に地震の揺れエネルギーを吸収する摩擦ダンパ発生機能を織り込んだシンプルな構造としている。


 日本は、微震も含めると年に2,098回(2007年気象庁まとめ)、日に6回近い地震がどこかで発生し、大なり小なりの被害を与えている。多くの人命や資産を地震から守るべく、地震予測の精度向上とともに、免震など防災メカニズムの導入促進に期待したい。