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第11回 「第35回国際福祉機器展」が開催、メカが支える自律的生活

 9月24日~26日に東京・有明の東京ビッグサイトで「第35回国際福祉機器展H.C.R.2008」が開催された。(1)電動車いす、電動三輪・四輪車、床走行リフト、固定式・据置式リフト、車いす用福祉車両などの移動機器、移動補助製品(2)ベッド関連用品(3)入浴用リフトや滑り止め用品など福祉機器や、施設用設備・用品などが、国内479社、海外15ヵ国・地域51社より、22,000点展示された。会期3日間の来場者数は12万773人と多くの注目を集めた。

 福祉用具(広義、福祉用具産業および共用品)の市場規模は、1995年に1兆3,508億円だったのが、一般製品のユニバーサルデザイン化や共用品の普及を背景として2000年に3兆1,762億円、2004年には3兆8,111億円と成長している。このうち、たとえば福祉車両が2000年度に2万9,005台だったのが2007年度で3万6,822台に増大しているなど機器や装置類の拡大が大きく、福祉機器においてもメカニカルが重要な役割を果たしていくことになる。

降りきったシートは車から離脱し、車いすに変身降りきったシートは車から離脱し、車いすに変身
 福祉車両としては大別して、車いすと助手席の乗り降りをスムーズに行う「回転・リフトアップ機構」、車いすのまま後部エリアに乗り込む「リフター」や「スロープ」の機構、両足が不自由な場合にアクセルとブレーキが左手でハンドルが右手のみで行えるような「運転補助装置」など三つの開発が盛んに行われているようだ。

 このうち助手席の回転・リフト機構を試してみた。90°強回転して車の側面を向いて床に近い位置に降りているシートに座ると、リモコンを渡された。スイッチを入れると、まずシートがゆっくりと上昇し回転しフロントガラスに向き直っていく。それから足がゆったりとできるよう少しスライドバックする。頭が当たらないように心持ちリクライニングになる。この完全に乗り込んだ状態でスイッチを押すと、降車の作業になる。少し前にスライドし、90°強回転して開いたドアの方に前進すると、ゆっくりと下降して床近くへ。リクライニングしてあるから頭もぶつからない。

 だが、記者の座高のせいもあろうが、リクライニングしていない状態だと、車中へとシートが上昇していく際に少し頭がかするのである。回転するときにはひざがぶつかる。「これは自分だからよけられるけど、足の不自由な方はぶつかりますね。センシングして接触・衝突を避けることは検討してますか?」と聞くと、そこまでは考えていないと言う。課題だと思う。

 ところで回転・昇降は直動機構とギヤにより行われる。回転はモータの動力を受けたギヤとベアリングにより、車内での前後のスライドはサーボモータの動力を受けたボールねじと直動案内により、回転は歯車機構により、昇降は直動システム+リンク機構によりスムーズに行われる。

 トヨタでは降りきったシートがそのまま離脱し、車いすとして利用できるシステムもあった。これは便利である。

電動車いすの試乗コーナー電動車いすの試乗コーナー また、電動車いすにも試乗してみた。実際、今回の展示会場でも電動車いすで移動している方が多く見られた。

 試乗用に、上り下りのスロープが付いた広場が設けてあって、一通りの状況が体験できる。「ジョイスティックを前後左右斜めに、行きたい方向に動かすだけです」と係りの人に言われ、前の人を追いかけるように前進し坂を上る。静かに、スムーズに進む。下りにさしかかったところで、前の車いすとの間隔が詰まってきた。「止まるのはどうすれば?」と係の人に呼びかけると、「ジョイスティックを放せば止まります」との回答。確かにすぐに止まった。「電磁ブレーキ」というやつである。コイルに通電することで発生する電磁力で制動させる。ジョイスティックを放しコイルへの通電が切れたときに、スプリングの力で動作する無励磁型電磁ブレーキだろう。これは安心できる。

 自律的な生活を目指すには、恐怖心や不快感が起こらないシステムが不可欠であり、今後もメカの活躍が期待される分野だと実感した。