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第17回 太陽光発電の効率向上

 太陽光発電の開発がヒートアップしている。民間調査会社の富士経済の調べでは、2012年の太陽電池市場は4兆6,000億円を上回り、07年の1兆2,000億円の3.9倍に拡大するとのこと。国内首位のシャープ、同3位の京セラ、4位の三菱電機など2010?2011年をめどに増産する計画だ。

 太陽電池がかりに国内の住宅や公共施設、事業所の8割に導入された場合、国内総電力需要の約3割を賄えるという試算がある。この年間発電量は原油5,000万KL燃焼分に相当し、京都議定書による日本のCO2削減目標(2006年対比で約1.6億t)に迫る1.3億tのCO2削減につながるという。

 しかしそれは太陽電池の変換効率が実用水準の10%以上であることが条件。つまりこのレベルを最低限押さえつついかに変換効率を高めるかに、各社ともしのぎを削っているのである。

 太陽電池には結晶シリコン型、薄膜シリコン型、化合物型などがあり、変換効率は多結晶シリコン型で最高18.6%(三菱電機)、CISという化合物型で10?12%程度だが、薄膜シリコン型は9%程度だ。しかしシリコン原料の受給が逼迫するなか、原料の使用量が少なくてすむ薄膜シリコン型の開発が盛んで、微結晶シリコン薄膜を重ねるなどで10%以上という変換効率をクリアすべく取り組んでいる。

太陽光自動追尾システム(提供:テックオカザキ)太陽光自動追尾システム(提供:テックオカザキ) ところでこの発電効率を高めるメカ技術がある。太陽光自動追尾システムである。

 テックオカザキが開発した太陽光自動追尾システムでは、太陽光照射角分離分析センサーを搭載することでヒマワリの花のように太陽光を水平・仰角共に追尾、常に太陽光照射方向に太陽電池アレイ(ソーラーパネル)を正対させ、アレイが出力できる最大発電量を常に得る高効率太陽光発電を可能としている。

 太陽光パネルは、太陽に対して正対しているときに、初めて太陽光線に対する太陽光パネルの最大発電量が得られる。一般的な住宅用太陽光発電システムは主に屋根に南向きに固定しているため、日中の一定時間(約2時間?3時間程度)しかその日の最大発電力を得ることができないが、この追尾システムを搭載することで、太陽光との正対時間が平均約6時間以上になる。季節、天候、気温条件の良い日なら、一般用固定式太陽光発電の約2倍の発電量(kwh)を得ることができるという。

 太陽光追尾発電システムの駆動は、無段階リニアに(常時追尾)駆動し、日の出から日没までの太陽光の方位変化を捉え、太陽光と常に対面するように駆動する。水平駆動追尾範囲は270°で、四季による方位変化や世界の日照に対応できる。一方、仰角角度の太陽光追尾では、対面する仰角角度6?75°で無段階リニア追尾、強風時には20m/s(任意設定可能)で自動的に水平位置まで駆動する。最大垂直角度での耐風速は、60m/sという。

 四季や温度、太陽光線により発電効率は変化するが、太陽光の水平方位変化を追尾することだけでも一般固定型太陽光発電システムに比べ約1.4倍程度、仰角角度も追尾することで1.7倍以上の発電効率が得られ、天候・気温によっては2倍近い発電量となることもあるという。

 メカの詳細は明らかにしていないが、水平駆動、仰角駆動とも揺動アクチュエータとベアリングが使われていると思われる。駆動エネルギーを太陽光発電で得ることからモータアクチュエータであろう。

 この太陽光追尾システムや、風力発電で風を最大限に受けるためブレードの角度を制御する可変ピッチや風車の向きを制御するヨー駆動装置などのように、新しい発電システムでも発電効率を高めるメカ技術が効力を発揮している。太陽電池自体の変換効率の向上とともに、こうしたシステムを強化するメカ技術の発展に期待したい。