第18回 「メカの血液」を可視化する

エンジン油可視化技術(提供:日産自動車)エンジン油可視化技術(提供:日産自動車) 日産自動車が、日本原子力開発機構とエンジン内の潤滑油(エンジン油)の流れを可視化する技術を共同開発している。原子力機構の中性子計測のノウハウを活用することで、従来難しかった装置内での潤滑油の流動状態を正確に把握、油の投入量を最適化し、関連装置を小型・軽量・簡素化しクルマの燃費向上につなげる考え。エンジン内部の油を解析する撮像システム・解析手法の開発は世界初という。

 ベアリングが「産業の米」と呼ばれるのに対し、潤滑油は「機械の血液」と呼ばれる。潤滑油の機能は?油膜を作ることで摩擦・摩耗を抑え焼付きを防止する「潤滑作用」?ピストンリングとシリンダ間で油膜を作り燃焼ガスの漏れを防ぐ「密封作用」?燃焼により発生した熱を外部に逃がす「冷却作用」?燃焼や回転中に受ける応力を分散する「緩衝作用」?摩耗で発生した粒子を洗い流す「清浄作用」?金属部品の錆発生を防止する「防錆作用」などがある。エンジン油は高速、高圧、高温などの環境下にさらされるピストンリングとシリンダーライナー、クランクシャフトとコンロッドのベアリング、動弁機構などエンジン部品の動きを円滑にし、エンジンの性能を引き出すとともに保護するものである。

 しかし近年、省燃費化やロングメンテナンス化などから、日米自動車工業会で組織したILSACの制定するエンジン油規格は、5W‐20、0W‐20など低粘度の傾向にある。低粘度化により粘性抵抗は低減できるが、一方で油膜切れによる摩耗防止性能の悪化が懸念される。こうした背景からも、エンジン油の流れが滞ってエンジン部品が摩耗することのないよう、必要以上の油量がエンジンに投入される傾向があったようだ。

 日産は世界有数の中性子ビーム実験施設を持つ原子力機構東海開発センター原子力科学研究所の研究用原子炉を活用し、早期に潤滑油の可視化技術を実用化したいとしている。
異分野と見られるこうした技術の融合は、山積する環境や安全の課題解決にとって、今後ますます必要とされてくるであろう。