第22回 石油業界の再編?潤滑油開発の活性化を

 新日本石油(新日石、西尾進路社長)と新日鉱ホールディングス(新日鉱HD、高萩光紀社長)が先ごろ、経営統合を行うことで基本的合意に達した。石油精製販売、石油開発および金属の各事業を併せ持つ世界有数の「総合 エネルギー・資源・素材企業グループ」への発展などを目指す基本コンセプトをもとに、両社で本経営統合に向けた実行計画を立案し、2009年3月をめどに「経営統合に関する本契約」を締結、同年10月に統合持株会社を設立し2010年4月に中核事業会社を設立する予定。両社の2008年3月期の連結売上高は 新日石HDが7兆5,240億円、新日鉱が4兆3,395億円で、単純合計すると11兆8,635億円。国内ガソリン販売シェアが新日石とジャパンエナジー(新日鉱HDの石油部門)の合計で36.5%を占める世界10位内の石油会社が誕生することになる。だが将来的な意味合いとしては、燃料電池やヒートポンプなど新エネルギーに活路を見出す新日石と、半導体ターゲット材料など電子材料に強みをもつ新日鉱HDのシナジー効果による新たな
ビジネス創生に期待するところが大きいだろう。

 統合の大きな背景としては、ガソリンなど石油製品の国内需要低迷による収益力低下への危機意識がある。石油元売各社とも、「国内市場の急速な縮小から単独での生き残りが難しい(新日鉱HD・高萩社長)」との認識を強めている。石油業界の収益悪化は、石油業界の設備過剰という構造的要因に起因している。1日あたりの原油需要は400万バレル程度だが、国内の製油所の原油処理能力は日量約480万バレルに及ぶ。両者では、「石油精製販売事業を中心に全事業部門でコストを点検し、聖域なき合理化・効率化を推進するとともに、経営統合によるシナジー効果で年600億円以上の統合効果を実現、継続的にその上積みを図って年1,000億円以上を目指す」としているが、設備過剰に対して「両製油所を含め統合から2年以内に日量40万バレルの処理能力削減を図る」(新日石・西尾社長)考えを示している。

 ところでこの経営統合は、「メカの血液」である潤滑油の分野でも、大きなイベントであろう。新日石、ジャパンエナジーをはじめ石油元売会社は、エンジンオイルや油圧作動油など潤滑油のメーカーでもあり、添加剤こそ購入しているが鉱油系のベースオイル(基油)は基本的に精製し、グリースメーカーや加工油メーカーなど潤滑油専業メーカーに販売している。なかでもグループ3基油と言われる高度精製基油(高粘度指数基油)は、省燃費エンジンオイルの主要技術となっており、これをリードしているのが石油元売メーカーということになる。

  近年、地球環境保全などから省燃費化などを狙ったエンジンオイルの日米自動車工業会規格(ILSAC規格)が3?4年周期で更新され、1試験項目で数千万円という取得費用も大きな負担となっている。今回のような統合でこうした負担がいくらかでも軽減され、地球環境保全に必要な開発の促進につながればと思う。

 両社とも自動車用潤滑油、工業用潤滑油を幅広く扱っており、統合後には油種統一の方向に向かうと見られるが、新日石が極微量油剤潤滑(MQL)用切削油を手がけ、ジャパンエナジーがハードディスクドライブ用流体軸受モータ用潤滑油を手がけるなど、それぞれ独自分野を有している。重機からMEMSに至るまで、メカにとって潤滑油はその機能を支える重要な要素である。統合によるシナジー効果が、こうしたメカの多岐にわたる要求への対応に及ぶことを期待している。