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第48回 カテーテル治療拡大に向け、安全性の高い技術を

ステント 米医療機器大手のボストン・サイエンティフィック社が2014年までに次世代ステント製品を投入するなど日本での心疾患治療用機器の事業を拡大すると発表した。国内でのカテーテル治療の拡大に向け、国内外のメーカーの開発競争が始まっている。

 心臓カテーテルは、心臓の検査や治療に用い、からだの動脈や静脈を通して心臓の中や心臓の周囲の血管までカテーテルを挿入、それによって血管内の圧力を計測したり、カテーテルを通して薬剤・造影剤などを投与するもの。狭心症や心筋梗塞の場合、冠動脈にカテーテルを挿入し、造影剤を注入することで血管の狭窄や閉塞を発見することができ、必要に応じてその狭窄や閉塞を治療できる。

 カテーテルが挿入しやすいよう、また内部のガイドワイヤーとの摩擦を減らして動かしやすいよう、欧米では潤滑性の高い生体適合性のポリマー材料が被覆されている。

 さて、先端には小さな風船がついていて、冠動脈が狭窄したり閉塞したりしている部分でその風船を膨らますことで良好な血流を回復させるバルーンカテーテルを使って狭窄などを解除すると共に、ステントと呼ばれる金属でできた筒状のものを冠動脈内に留置する「ステント留置術」もある。日本ではステント留置術が現在主流である。

 この埋め込み型ステントは、耐食性の高いステンレスやコバルト-クロム(Co-Cr)などの金属材料を網状の筒に加工した器具で、カテーテルを介して患部に挿入され、梗塞部で拡張することで物理的に血管を広げ、拡張後は欠陥内部に留置されるため、高い生体親和性と、絶え間なく拍動する血流による物理的負荷に耐えうる機械特性が求められ、ステント材料表面にそれら特性を付与するコーティングを処理している。

 この表面処理層はステントの大きな変形に追従して表面から剥離しないことが重要で、たとえばトーヨーエイテックではCo-Cr系ステントへのDLCを提案し,その耐剥離性を向上させるためにSi濃度を傾斜させる方法を開発したほか、冠動脈薬剤ステントへの適用としてCo-Crステント表面にDLCを成膜し、プラズマ処理による官能基の修飾後、薬剤を含む生体適合性ポリマーを被覆したものを開発した。生体内で薬物が放出された後,ポリマーは体内に拡散し,残ったDLCは高い生体適合性をもって残存する。こうしたステントへのDLC被覆を先に欧州で事業展開を開始しているという。

 国内でカテーテル治療、ステント留置術が普及してきており、日本ステントテクノロジーなどがDLCコーティングを施したステントを上市しているものの、埋め込み型ステントの多くは輸入品が大半。国産の良好な製品・技術が開発されることで、患者の安全・安心の確保とともに、新しいビジネスと市場が形成されていくことに期待したい。