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NEDO、生活支援ロボット実用化に向けてプロジェクト

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO、 https://app3.infoc.nedo.go.jp )は、介護・福祉、家事、安全・安心等の生活分野で役立つロボットの実用化を推進するため、2009年度より生活支援ロボット実用化プロジェクトを開始した。少子高齢化時代の中、人々への生活支援が期待されるサービスロボットの実用化において最大の課題となる安全性について、今後5年間で検証と基準の確立を行い、さらに国際標準獲得を目指す。
 
 このプロジェクトの推進において、NEDOは産業技術総合研究所が2009年度補正予算で整備するロボット安全研究拠点と連携し、研究開発を効果的に実施する。

 わが国では、少子高齢化が急速に進展しており、産業労働力の不足に加えて、家庭での家事や介護等の労働力の不足が懸念されています。このため、ロボット技術は産業分野だけではなく、介護・福祉、家事、安全・安心等の生活分野への適用が期待されている。しかし、生活分野におけるサービスロボットについては、不特定多数の人が接触しうることなどから対人安全技術・安全基準が確立されておらず、このまま民間企業の独自の取組だけに委ねていては、安全性についての不安が残り本格的な普及が望めない状況になっている。

 例えば、高齢者の健康な生活を維持するため、身体機能を支援する装着型ロボットや人を乗せて移動する搭乗型ロボットは、一部で実用化が始まっているが、誤動作の防止や安全な停止など、身体に接するロボット技術としての安全性はいまだ確立されていない。

 そのため、使用する機能、環境などに制約が生じ、ユーザーも使用をためらい、製造業者も開発に二の足を踏む状況で普及の障壁となっている。また、清掃ロボットや警備ロボットは、すでに事業化されているが、人や障害物を上手に回避する、自律して安定な走行を行うなどの安全技術は確立されていない。そのため、現時点では、夜中に無人のビルで作業したり、人が近づくと作業を停止したりするなど、人と共存した環境下でのロボットの運用は行われておらず、人の仕事をロボットが支援できる範囲は非常に狭いものとなっている。

 このように、少子高齢化時代において、ロボット技術を家庭や職場に導入し、人の生活や労働を効果的・効率的に支援する社会を実現するためには、ロボットの安全技術の確立が喫緊の課題となっている。

 こうした背景を踏まえ、本プロジェクトは、生活支援ロボットとして本格的普及が期待されるロボットを対象として、安全性に関する試験、安全性データの取得・蓄積・分析により安全性検証手法の研究開発を行い、生活支援ロボット安全性基準を策定する。さらに、この安全性基準については国際標準獲得を目指す。

 また、産業技術総合研究所が整備するロボット安全研究拠点には、生活支援ロボットの対人安全性確保のための人・技術・情報が集約されることから、この安全研究拠点を有効活用して、プロジェクトを効果的に推進していく。
 
 2013年度までの5年間では、以下の研究開発を実施する。(カッコ内は、実施者)


  1. 生活支援ロボットの安全性検証手法の研究開発
     生活支援ロボットの安全性等の各種データを取得・蓄積・分析し、実務的な安全性検証手法を確立するための技術開発を行う。具体的には、生活支援ロボットの機械・電気安全、機能安全などに関する安全性基準の定量化、安全性試験方法・手順の確立、安全性基準適合性評価手法の確立を行う。さらに、策定した試験・評価方法や手順に関して、国際標準獲得などを目指す。(日本自動車研究所、産業技術総合研究所、労働安全衛生総合研究所、名古屋大学、日本品質保証機構、日本ロボット工業会、製造科学技術センター)
  2. 安全技術を導入した移動作業型(操縦が中心)生活支援ロボットの開発
    安全技術を導入した移乗・移動支援ロボットシステムの開発
    高齢者や障害者の自立をサポートする移乗・移動支援ロボットシステムを対象として、実用化に必要な安全技術の開発を行う。(パナソニック)
  3. 安全技術を導入した移動作業型(自律が中心)生活支援ロボットの開発
    (A)安全技術を導入した生活公共空間およびビルの移動作業型ロボットシステムの開発(富士重工業)
    人と共存する生活公共空間およびビルにおける移動作業型ロボットシステムを対象として、実用化に必要な安全技術の開発を行う。
    (B)安全技術を導入した警備ロボットシステムの開発(綜合警備保障、北陽電機、三菱電機特機システム)
     自律的な判断に基づいて巡回監視や案内を行う警備ロボットを対象として、リスクアセスメント,回避技術や危険予防技術の開発、安全度水準準拠の測域センサの技術開発により、実用化に必要な本質的安全設計や安全技術の開発を行う。
  4. 安全技術を導入した人間装着(密着)型生活支援ロボットの開発
    (A)安全技術を導入した人間装着型生活支援ロボットスーツHALの開発(CYBERDYNE、筑波大学)
     健常者、高齢者、障害者に対して、上肢動作支援(食事支援、把持支援など)、下肢動作支援(立ち座り・歩行支援)、および全身動作支援(重作業支援)を実現するロボットスーツHALを対象として、装着型生活支援ロボットの安全技術を開発を行う。
  5. 安全技術を導入した搭乗型生活支援ロボットの開発
    (A)搭乗型生活支援ロボットにおけるリスクアセスメントと安全機構の開発(トヨタ自動車、長寿医療センター、フォー・リンク・システムズ)
     人と密接に動作する搭乗型生活支援ロボットにおける、ハードウエア、ソフトウエアの安全機構についての技術開発を行う。