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 本作はイタリア、トスカーナ地方の美しい自然を背景にした、レオナルド・ピエラッチョーニ監督・主演のラブコメディ。

 トスカーナ地方の田舎町で会計士として働くレバンテ(レオナルド・ピエラッチョーニ)が、素人画家の弟リーベロ(マッシモ・チェッケリーニ)、レズビアンの妹セルバジャ(バルバラ・エンリーキ)と父と共に暮らす町外れの農場に、スペインから来たフラメンコ・ダンサーの一団が道に迷い訪ね、一夜の宿を借りることに。ダンサーの一人、カテリーナ(ロレーナ・フォルテーザ)に一目惚れしたレバンテだったが、彼女は自分が町で働いている間に旅立ってしまう。
…はずだったが、狭い町のこと、「お前のうちでフラメンコを踊っている美女たちは誰だ」と友人からやっかみ混じりの言葉を投げられる。
まだ家にいる!レバンテは仕事を投げうって、愛車のバイク、モトベカンにまたがり、家路を急ぐ。

モペット モトベカンとは、フランスの人気モペット(空冷2サイクル短気筒エンジンを搭載した自転車)で、バリエーターが取り付けられ加速もスムーズに行われる。日本では原付2種の区分で、自転車モードにしてペダルをこいで走ることもできる。レバンテは立ちこぎもまじえて急ぐ。ところが農場に着いてカテリーナの舞う姿に見とれ、倉庫の壁に激突、20年来の友だったモトベカンは無残な姿に。レバンテはその亡がらに「キャブレターを埋葬してやるからな」と言葉をかける。近年は、排出ガス規制への対応から燃料噴射ポンプへの移行が進んでいるが、1956年以来基本デザインが変わらないモトベカンで積んでいるのは、もちろんキャブレターである。

 本作の原題は“IL CICLONE”、英語で言えばサイクロン、つまり熱帯低気圧や暴風を指す。平穏な田舎町の変わりばえのしない生活にカテリーナらダンサー一団がもたらした嵐、という意味だろうか。風を切って走り風とともに去ったモトベカンのほか、カテリーナが練習するブーメランなど、風をイメージさせる小物が散りばめられ、そこにフラメンコの熱気が加わって、サイクロンとなるのであろう。サイクロンに巻き込まれた人々の「それから」は?ラテン系テイストのラブストーリーも、たまにはいい。