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big sleep 本作はレイモンド・チャンドラー原作で、独特なまなざしから“スリーピング・アイ”の異名を持つロバート・ミッチャムがハードボイルド探偵、フィリップ・マーロウを演じている。ヒッチコック作品で常連のジェームス・スチュワートも老将軍役で登場する。

 私立探偵フィリップ・マーロウは、スターンウッド将軍(ジェームス・スチュワート)の次女カーメン(キャンディ・クラーク)がゆすりにあっている件で、ロンドン郊外の将軍家に呼ばれる。マーロウが脅迫状の差出人の家にたどり着くと、銃声が。家の中へとびこんだが、そこはゆすりのネタ、カーメンのヌード写真を撮影している現場で、薬漬けで全裸のカーメンと頭部を撃ち抜かれた脅迫者の死体があった。事件を追ううちに、長女ヴィヴィアン(サラ・マイルズ)の夫の失踪、夫が出入りしていたロンドンの賭博場の顔役などがからんでいく…。

 さて、物語の冒頭、マーロウが招かれたのはスターンウッド将軍の温室、ビニールハウスである。重油ボイラーによって冬場でも30℃以上に保たれている、あれである。車椅子の将軍が依頼の長話をしている間、ダークスーツをダンディーに着こなしているマーロウはもちろん、ネクタイを緩めはしない。スコッチを勧められるが、生ビールか、ロンドン・ギネスのほうがいい、観ているものにもそう感じられる暑苦しい場面である。ところで原油高騰で問題になったように、ビニールハウスでは大量の重油が使われる。これに対し最近ではCO2削減の見地から、太陽電池と燃料電池を組み合わせた発電システムなどの試行も始まっている。なんにしても、植物のコンディションに合わせた温調設備が老将軍のコンディションによいかどうかは謎である。

 フィリップ・マーロウはロサンジェルスの私立探偵だが、今回の舞台はロンドン。マーロウの好むジンベースのカクテル、ギムレットは本場としても、愛車のキャデラックはそぐわないためか、登場しない。何と彼が運転するのはメルセデス・ベンツである。1日25ドルの日当と実費というしがない稼ぎからはしっくりこないアイテムばかりだが、ダンディズムの演出ということで大目に見るとしよう。