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 オバマ大統領の支持率が低迷している。オバマ支持を表明し指名獲得の支えとなった米政界の名門ケネディ家が、下院議員パトリック・ケネディ氏の引退表明で政界から姿を消そうとしている。政治の潮流はいつも速い。本作は、1960年の大統領選でジョン・F・ケネディと熾烈な選挙合戦を繰り広げたリチャード・ニクソンを、「ウォーターゲート事件」を暴き大統領の座から引きずり下ろした新聞記者二人の実話を映画化したものである。

 1972年、共和党ニクソン政権時。野党・民主党本部があるウォーターゲート・ビルに、5人の不審者が盗聴器を仕掛けようと侵入した。彼らは大統領選挙に備え必勝を期する民主党のキャンペーンを攪乱するため雇われ、元CIAの情報部員と大統領再選本部の現役の対策員で固められていた。ワシントン・ポスト紙の記者ボブ・ウッドワード(ロバート・レッドフォード)とカール・バーンスタイン(ダスティン・ホフマン)は、このウォーターゲート事件に興味を示していた。ニクソン大統領とホワイトハウスのスタッフは「侵入事件と政権とは無関係」との立場をとったが、二人がニクソン再選委員会の選挙資金を追求するうちに、FBIやCIA、法務局もが関与する陰謀にたどり着いていく。

 さて、取材が真相に迫るに従い、二人の命も危険にさらされる。何しろ国家機密を守るためFBIもCIAも必死である。自宅も盗聴され監視されていて、ボブとカールの二人は、表だって情報交換もできない。そこでお得意のタイプライターで「筆談」するわけである。「自分たちの命もねらわれている」とボブがタイプする。1970年代初頭の電動式タイプライターでは、表面に活字が並んだタイプボールが回転しながらインクリボンとプラテンに打ち付け、右に移動していく。それからダイヤルを回して紙を送りボブのメッセージを確認すると、今度は改行してカールがタイプしていくわけである。新聞記者が主役の話だけにタイプライターを使う場面は多く、タイピングのカチャカチャいう音が響き渡っている。

 ニクソン失脚のストーリーは周知の事実であるが、ロバート・レッドフォードとダスティン・ホフマンの若き二大スターが生命の危機も顧みず政府要人への取材に奔走する姿は、圧巻である。