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日本原子力研究開発機構など、プルトニウムLX線スペクトルの高分解能測定に成功

 日本原子力研究開発機構(原子力機構、http://www.jaea.go.jp )東海研究開発センター核燃料サイクル工学研究所放射線管理部、九州大学( http://www.kyushu-u.ac.jp )、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社(SIIナノテク、 http://www.siint.com )の共同研究グループは、超ウラン元素(TRU)測定用の超伝導相転移端温度計(TES)型マイクロカロリーメーターを開発、世界に先駆けてプルトニウム(Pu)とアメリシウム-241(241Am)から放出されるエルエックス線(LX線)のスペクトルを従来の放射線測定器の約1/5の高分解能で測定することに成功した。

 核燃料物質であるPuなどの超ウラン元素からは、アルファ(α)線とともに微量のLX線も放出されている。現在のPuの分析ではα線測定法や質量分析法を使用しているが、これらの方法では、Puなどを化学的に分離して測定する必要がある。一方、LX線の測定であれば、物質の外側から非接触で測定することができるが、従来の放射線測定器ではエネルギー分解能が十分ではないため、PuのそれぞれのLX線や核燃料物質中にPuと同時に存在する241AmのLX線と識別ができず、一部の限られた用途の測定にしか利用されていなかった。

 今回、原子力機構では、九州大学との共同研究により、超伝導を利用した高分解能の放射線測定器であるTES型マイクロカロリーメーターを超ウラン元素測定用に開発、核燃料サイクル工学研究所においてPuの測定実験を行ったもの。実験の結果、従来の放射線測定器よりも高分解能(半値幅:約50eV)のスペクトルを測定、Puと241Amが識別できることを確認した。

 本研究成果は、超ウラン元素のLX線の放出率に関する物理学的な基礎データの整備への適用が期待できるほか、測定装置をスケールアップすることにより、これまでのPu測定では困難であった非破壊かつ非接触の測定によって、分析作業の簡便化、迅速化、被ばく線量の低減が期待できる。