第123回 モーターのトップランナー基準で、産業界のさらなる省エネ化の推進を!

hitachi提供:日立産機システム 経済産業省は1月24日の総合資源エネルギー調査会第16回省エネルギー基準部会を開催、温室効果ガス削減に向け自動車や家電製品、OA機器などのエネルギー消費効率の改善をメーカーに求める「トップランナー基準」について、現行の対象機器は基準の見直しを進めるほか、新たに主要な産業用モーターである三相誘導モーターを対象機器に追加することを決めた。

「トップランナー基準」対象機器に三相誘導モーターを追加

 トップランナー基準は1999年に導入された省エネ規制で、商品化された製品で最もエネルギー消費効率の高いもの(トップランナー)を基準として、機器メーカーにその効率を達成する省エネ型製品の製造を求めるもの。現在、自動車や家電製品、OA機器など23品目を対象に、品目ごとにエネルギー消費効率の目標基準値、製品区分、目標年度、基準値達成の判定方法などを規定。目標年度に基準値を達成できなかったメーカーに対しては、経済産業大臣による勧告や社名の公表、命令などの措置に加え、罰金が課せられる(省エネ法による)。トップランナー基準導入により、たとえばルームエアコンでは導入前に比べエネルギー消費効率を68%改善しているという。

 三相誘導モーターはブラシや整流子がなく堅牢構造でメンテナンスフリーで使えること、周波数と電圧の制御(VVVFインバータ制御)が可能なことなどから、国内で年間1,000万台弱が出荷、1億台を超える機器が国内で普及しポンプ、圧縮機、送風機から、工作機械、新幹線に至るまで、各種産業用機械に幅広く採用されている。しかし、三相誘導モーターによる電力消費量は、わが国における産業用電力消費量(約4,900億kWh)の約75%と推計されるほか、電力消費量全体(約1兆kWh)の50%超を占める。

 米国では1997年に施行されたエネルギー政策法(EPAct)に代わり、2010年12月19日にはエネルギー独立安全保障法(EISA)が施行され、その中で米国内で製造・輸入されるモーターの効率が規制、これまでEPAct(IE2レベル)効率が適用されていた機種にはPremium(IE3レベル)効率の使用を、規制対象外だった機種にはEPAct効率の使用を義務付けており、効率基準を満たさないモーターとモーターが組み込まれた製品が販売された場合にはペナルティーが課せられる。欧州でも同様の高効率化が進んでいるのに対し、わが国は、ロシアやインドとならんで効率規制が取られておらず、トップランナー基準によって三相誘導モーターの標準品から高効率品への移行を促すことで、産業分野での省エネ化の推進をねらうもの。

メカニカル・ロスを抑制し、さらなる省エネ化へ

motor提供:兵神装備 graphその構造は、かご形三相誘導モーターで見ると、シャフト(軸)と、一体に回転するローター(回転子)と、ローターと相互作用してトルクを発生させるステーター(固定子)、回転するシャフトを支えるベアリング、発生した熱を逃がす外扇ファン、それらを保護するフレーム、ブラケットなどから構成される。

 モーターの効率は一般的に次のように表される。

 効率(%)=出力/入力×100=(入力―損失)/入力×100

 つまり出力=(入力-損失)から、損失は(入力-出力)として定義される。損失は、モーター内で熱、振動、音などのエネルギーに変わってしまうもので、銅損、鉄損などの電気的な損失と、ベアリングの摩擦損失や冷却ファン損失による機械的な損失などからなる。

 電気的な損失に対しては、高磁束密度鉄心の開発や電線充填量の高密度化などで高効率化が図られている。メカニカルな損失に対しては、軸受ハウジング部の冷却性能向上により軸受の発熱を抑えたり、軸受に封入するグリースの配合を変えるなどで低トルク化を図っている。

 仮にすべてのモーターが高効率モーターに転換された場合、わが国電力消費量全体の約1.5%にあたる年間約155億kWh、温室効果ガス排出量(12億8,200万t)の約0.4%に相当する約500万t-CO2 が削減されるという。トップランナー基準対象機器への三相誘導モーターの追加により、ベアリング技術などメカニカル・ロスをなくす技術開発が促進され、産業界のさらなる省エネ化が図られるよう期待したい。