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第125回 難削材の加工機械・技術が注目

moriseiki高精度・高効率複合加工機(提供:森精機製作所) 日本工作機械工業会は先ごろ、2010年の工作機械の受注額が前年比2.4倍の9,783億円と大幅に増加したと発表、2011年の受注については3年ぶりの1兆円台となる1兆1,000億円となる見通しを打ち出した。中国などアジアをはじめ、欧州、北米、日本ともに需要が回復しているが、自動車や航空機などの精密部品、特に難削材の加工に適した日本の工作機械・加工技術が注目されているという。

 航空機の機体材料はアルミニウムが大半を占めていたが近年は軽量化による燃費向上を目的に、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)の比率が構造部材重量の半分を占めるまでに多用され、CFRPと相性が良いチタン合金も様々な部位で使用されるようになった。チタン合金は軽く、強く、錆びないという特性を持つ反面、熱伝導率が低く、靭性が高く、切削速度を上げると急激に工具摩耗が起こるため、難削材と言われる。このほか燃焼室回りに使用される耐熱性の高いインコネルなどのNi基合金の材料も同様に難削材である。

 一方、航空機部品では軽量・高剛性化を図るべく、ねじなどによる締結方法をとらないため部品単体の形状が複雑となり、旋削機能も含めた高剛性で高精度な5軸複合加工機が必要となる。5軸複合加工機1台に工程集約できるようになり、工程間の搬送や段取り時間の削減、加工精度のバラツキを抑え、航空機部品の生産性向上に大きく寄与している。

makino5軸制御マシニングセンタ(提供:牧野フライス製作所) こうした難削材の加工に対して、たとえば牧野フライス製作所の5軸制御マシニングセンタ「T2/T4」では、高トルク(1000/1500N・m)の主軸により、重切削での耐久性と高速性、高精度といった高能率加工を実現、また200L/min(7MPa)のクーラントが切屑を速やかに除去するほか、難削材の重切削加工で発生する振動を高剛性の本体構造により低減することで、チタン合金の加工時間を従来の1/4に減らし、工具寿命を2倍に高めているという。

 こうした難削材に対応する高剛性、高精度の工作機械構造が工夫される一方で、工具においても難削材の加工に対応する技術も進んできている。

mitsubishi提供:三菱マテリアルツールズ 三菱マテリアルでは先ごろ、高い比強度を持つ反面、炭素繊維が高強度であるため工具寿命が極端に短く、積層体構造であるために穴加工時にデラミネーション(層間剥離)が発生しやすいCFRPや、CFRPとアルミニウム合金の重ね板の穴加工に特化した「MCS形」を開発した。切刃デザインと新開発の多層微粒CVDダイヤモンドコーティングの採用により優れた穴精度と長寿命を実現したほか、独自の素材成形技術によるユニークなクーラント穴を付加することで、特にCFRPとアルミニウム合金の重ね板加工をする際の切りくず排出性が向上、高い穴精度を実現している。

 日立ツールの「エポックDスレッドミル」では結晶粒子がさらに微細化したSi系ナノコンポジットコーティングをPVD(物理気相成長)処理、3800HVの硬度と1200℃の耐酸化温度を実現、1本の工具で高硬度材における下穴+ねじ切り加工を可能にしている。

 航空機だけでなく、無害で耐摩耗性、耐食性、人体との親和性が要求される人工関節などのインプラント製品にも、コバルトクロム合金、チタン合金、セラミック系のジルコニアなどの難削材が用いられる。人工骨、人工歯などインプラント製品もまた形状が複雑なことから、工作機械にはCAMによる加工プログラムや、難削材に対応した機械剛性、高速、高精度加工が求められる。森精機製作所では旋削とミーリングを融合した高精度・高効率複合加工機「NT1000」を用いて、これまでエンドミル加工していた人工大腿骨コンポーネントのR 形状を、CBN砥石を使用して加工することで加工時間を大幅に短縮。難削材の加工にもかかわらず、エンドミルに比べて工具寿命が長く、工具費用を大幅に抑えることができるほか、ワークを2個取り付けることで加工効率が向上した、としている。

 航空機、医療機器など複雑形状の難加工が必要とされるアプリケーションが増えてきている。中国、韓国などアジア勢の工作機械の生産が拡大してきているが、わが国の得意とする高精度・高速・高剛性で複合加工に対応するマシニングセンタや難削材加工での高能率化を実現するコーティング工具などの高付加価値技術で差別化を図り、工作機械産業のさらなる市場拡大に努めてほしい。