第135回 表面改質展2011に見る環境対応技術

表面改質展2011表面改質展2011 2020年代の早い時期に電力需要の2割を太陽光発電で賄うとする構想や、東日本大震災被災地の復興に際し太陽電池など新エネルギーを備えた住宅・施設の建設を推進しようとするエコタウン構想など、原子力発電に頼らないエネルギー政策が検討されてきている。こうした中、5月25日~27日に大阪で開催された「表面改質展2011」でも、環境への負荷が少ないドライコーティング(乾式の表面改質)によって省エネ・創エネに貢献する技術が紹介された。

 トーカロでは風力発電機向け軸受などでの電食対策として、セラミック溶射技術を提案した。電食とは、軸受周辺から軸受内部に電流が通過し、転動体と軌道面の接触面にスパーク現象が発生、軸受の軌道面と転動面に生じる損傷。電食は、風力発電機向け軸受の故障原因の多くを占める。この損傷に対して、軸受外輪の外径部から側面に特殊セラミックスを溶射した「セラミックス絶縁軸受」では、絶縁性能を著しく向上、電食を防止し、風力発電機向け軸受のメンテナンスフリー化に貢献している。電食対策はまた、新幹線の発電機用軸受でも必要とされており、セラミックス溶射した絶縁軸受によって軸受メンテナンス周期の延長を実現している。

 不二機販では、アート金属工業と共同で自動車エンジン用アルミニウム合金製のピストンスカート部にショットピーニング(微粒子衝突による加工)を施し、強度を高めつつフリクションを大幅に低減する技術を紹介した。ピストンスカートとシリンダライナの低フリクション化には、スカートの表面粗さを0.4Ra以下にすることができ耐久性のある表面処理を施すことが必要。表面処理としてはなじみ性の高い樹脂をコーティングするのだが、下地処理としてショットピーニングを施すことで、耐焼付き荷重を高めつつ、スカート面を細かい凹凸面とし樹脂コート後の表面粗さを細かくして、低フリクション化を図るという。

 日本アイ・ティ・エフでは、硬度が50Gpa以上で耐熱温度が700℃以上という「水素フリーDLC」を紹介した。日産自動車のエンジン用バルブリフターで採用されたとおり、潤滑油を用いずに低い摩擦係数を示す水素フリーDLCだが、エンジン油中ではさらに摩擦係数を低下、省燃費に貢献するとした。

 三菱電機では、IHIと共同で航空機エンジンの低圧タービンブレードの耐摩耗コーティング向けに、微細なパルス放電を利用した被膜形成技術「MSCoating」を紹介した。低圧タービンブレードでは従来、個々の先端が運転中に互いに接触して擦れ合うため、肉盛り溶接によって耐摩耗材料の被覆が行われているが、肉盛り溶接は前処理(予熱)や後処理(余肉の除去加工)が必要で、高い信頼性を得るためには溶接作業の高度な技術が必要と、生産性やコスト面で改善が求められていた。これに対しMSCoatingは、微小なパルス放電の繰り返しにより金属あるいは導電性のセラミックスの皮膜を被処理材の表面に形成する技術で、前処理が不要なほか専用装置による自動的な表面処理により高い生産性と皮膜の高信頼性を実現できる。こうした特徴を活かして三菱電機では、金型、機械部品などに適用することで、硬質被膜による耐久性の向上、ロングメンテナンス化が可能としている。

 ダイヤモンドライクカーボン(DLC)の半導体特性を生かした太陽電池の開発が進められるなど、被膜の高機能化は日々進展してきている。表面改質展2011の展示を通して、創エネ・省エネに貢献する被膜の機能性向上への取組みの活発化している様子が感じられた。