第138回 健康大国戦略を支えるの医療機器技術の普及・拡大を!

MEDTEC2011の様子 現在のわが国における医療機器の規模は、世界市場の10%程度にあたる約2億円。MRIや内視鏡など診断用機器が輸出され続ける一方で、人工心臓など人体に埋め込まれる治療系インプラント機器は、ほとんどが海外製品に頼っている。6月29日~30日に横浜市のパシフィコ横浜で開催された医療機器設計・製造展「MEDTEC Japan 2011」では、カテーテル治療に関する技術を中心とする治療系インプラント機器が広く紹介された。

 カテーテル治療では、ふとももの付け根などに小さな穴をあけ、細い管状のカテーテルチューブを血管に通して、異常のある冠動脈入口まで到達させる。カテーテルの中にはさらに細い針金(ガイドワイヤー)が通っていて、この針金を使って細くなった血管を広げたり、詰まってしまっている血管を治療する。カテーテル手術は、小さな穴をあける程度の傷だけですむので、従来のバイパス手術に比べ回復が早く、患者への負担を軽くできる低侵襲治療として適用が広がってきている。

 まず、血管を通すカテーテルチューブ自身に生体適合性があり滑りのよい材料を使う必要がある。シリコーンやポリイミドなどが用いられるが、東レ・ダウコーニングでは、さらにカテーテルチューブの外面に施すことで、冠動脈入口までカテーテルチューブを滑らかに送り込む高潤滑性シリコーン製コーティングをアピールした。このコーティングは、注射針を挿入しやすくしたり、シリンジを押し込みやすくする潤滑性向上にも用いられるという。

 また、PTCA(経皮的冠動脈形成術)ガイドワイヤー製造トップシェアの朝日インテックでは、伸線技術で強度や線径をコントロールし、ワイヤーフォーミング技術でミクロンレベルの精度で成形したうえで、ワイヤーを患部に正確に送り込むための良好な回転追従性を付与する「トルク加工」を施す。さらにワイヤーの表面にPTFEコーティング(いわゆるテフロン加工)や親水性コーティングを施し、血管内でワイヤーを滑りやすくし、ワイヤーへの血栓を付きにくくしている。

 一方、ステント治療(ステント留置療法)では、ニッケル‐チタン合金やステンレスなどの金属でできた網目状の筒「ステント」をバルーンにかぶせ、それをカテーテルの中に通っているガイドワイヤーで動脈の狭くなってしまった部分に通す。そこでバルーンをふくらませてステントを広げる。バルーンはすぼめて取り除くが、ステントは広がった状態で動脈の狭くなった部分に残すので、動脈を広げることができ、血流を正常に保つことができる。治療した部分がまた狭くなってしまう再狭窄を防止する治療法として注目されている。
ステント治療ステント治療2
MEDTEC2011不二製作所ブースMEDTEC2011不二製作所ブース この血管内に留置されるステントの生体適合性を高めるため、カーボン材料、特にダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングが採用されてきている。こうした用途に対し不二製作所では、DLCコーティングの下地処理として密着性を上げるブラスト処理を提案している。ステントの機能を長期にわたり発現させるDLCコーティングの耐久性を高めることで、ステントの機能不全に伴う再手術の危険性を低減し、患者の精神的・肉体的な負担を軽減する技術としても期待できよう。

 昨年発表された新成長戦略では「ライフイノベーションによる健康大国戦略」として医療・介護・健康関連産業を成長牽引産業にすること、日本発の革新的な医療機器の研究開発促進を重点的に行うこと、アジアなど海外市場へ積極的な展開などを行うことを戦略分野とする基本方針が決定した。わが国の医療機器産業の活性化が期待される中で、ここで紹介したような材料・コーティング技術に支えられた医療機器が、安全で信頼性の高い低侵襲治療の場で活躍し、もって日本の医療機器の市場を拡大していくことを願う。