第145回 フランクフルト自動車ショー 欧州燃費規制で進むEV化、軽量化

BMW「iシリーズ」 ドイツ・フランクフルト国際自動車ショーが9月13日~25日に開催されている。32の国・地域から1,012社が出展した。自動車メーカーの世界初披露(ワールドプレミア)89件のうち、45件が独メーカーによるもの。特に欧州ではCO2排出規制が2012年から強まることから、電気自動車(EV)やHEVの出展が目立った。欧州では従来、長距離をレスポンスよく低燃費に走るディーゼルエンジンの割合が高いが、燃費規制に対応して長距離ドライブにはHEV、短距離走行用の街乗り(シティ・コミューター)としてはEVが有効と見られている。しかし、EVの市場を拡大する上では走行距離の延長が不可欠だ。ここではEVの展示について、走行距離延長の試みを交えて、トピックス的に紹介する。

フォルクスワーゲン「e-up」 独フォルクスワーゲン社では全長3.54mの車体に、排気量1Lのアイドリングストップ機構付き直列3気筒エンジン(出力は44kW/55kWのガソリンエンジンまたは出力50kWの天然ガスエンジン)を搭載した小型車「up!」を発表したが、2013年に発売する予定の電気自動車仕様「e-up!」も展示した。upの欧州混合モード燃費は、44kW仕様が23.8km/L、55kW仕様が23.3km/L、天然ガス仕様車の燃費が31.3km/kg。これに対しe-up!は、フロントアクスルに置かれたトランスミッションとデファレンシャルを一体設計した最高出力60kW(連続出力40kW)のモーターを回して、0~100km/hで加速11.3秒、最高速135km/h、最大走行距離130kmという走行性能を発揮する。高張力鋼板(ハイテン)を使って車体重量を1t程度と軽量化し走行距離延長を図るほか、ルーフにはソーラーパネルを装備し、床下にレイアウトされた蓄電容量18KWhのリチウムイオンバッテリーの充電を補完する。

 独ダイムラー社は、独BASF社と共同開発したEVコンセプト・モデル「smart forvision」を出品した。ルーフにBASF社製有機太陽電池を搭載、発電で得られた電力は、車内換気用ファンの駆動に利用される。また、室内側には車内を面で明るくできる有機ELを使った照明を採用、消費電力の低減を図った。これらの手法によってリチウムイオンバッテリーに蓄えた電力の使用を低減し、走行距離の延長につなげている。

BMW「i3」 EVの課題である航続距離の延長では、何といってもモーターの負荷を軽減する軽量化が有効だ。独BMW社は車体の約3割に炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を採用し約100kgの軽量化を実現した2013年発売予定の「i3」を披露した。i3はモーター、バッテリー、サスペンションなどを収めたアルミ製の「ドライブ・モジュール」の上に、CFRP製の乗員室「ライフ・モジュール」を載せた構造。CFRPは米ボーイング社「787」や仏エアバス社「A380」で採用され航空機の航続距離延長と燃費低減に貢献しているが、ここでは軽量・高剛性なCFRPの採用により、全長3.85mながら車重1,250kg、走行距離130~160km、バッテリー充電時間6時間を実現しつつ、ドライバビリティ向上と衝突安全性を確保している。BMWグループとSGLの合弁会社SGLオートモーティブ・カーボン・ファイバーでCFRPの生産工場を開設しているが、部品製作にあたっては加工の難しいCFRPの易加工性と低コスト化が求められている。

カーボンプリプレグ EVでは、モーターの高出力化のためモーター本体の電気設計やモーターの制御・電気システムの改良や、出力向上に伴う発熱量増加に対応するための冷却性能の向上だけでなく、部品の耐熱性が重要となる。特に軽量化から採用が進む樹脂部品では耐熱性を補うコンパウンド技術などが適用されているが、上述のCFRPの加工性の悪さをも解決する手法として、CFRPに熱可塑性樹脂をあらかじめ含浸させ射出成型による量産性を持たせた熱可塑性カーボンプリプレグが登場している。ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂など耐熱性が極めて高く機械的特性に優れる熱可塑性樹脂をマトリックスとしたカーボンプリプレグを使うことで、軽量化だけでなく耐熱性や摩擦摩耗特性を高めるなど部品の付加価値を高めることになる。

 EVの搭載バッテリーあたりの走行距離延長では、軽量化のためのユニットのコンパクト化などから、ますますモーター周辺の高温化が進むと見られる。EVの市場拡大においては、上述のような軽量化につながり高温への体制に優れる材料技術や表面改質技術などの開発促進が待たれている。