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NEDO、世界最高レベルの発電プラント用鉄鋼材料の設計指針を確立

 NEDOは、産学官の最先端技術を結集して取り組んでいる高効率火力発電プラント用鉄鋼材料の開発において、長時間特性であるクリープ(一定の力を加えた時に生じる変形の内、長時間の経過とともに徐々に変形する現象)破断強度を従来よりも25~50%アップする微細組織の変化機構を世界で初めて解明、世界最高強度を達成する新規鉄鋼材料の合金設計指針を確立したと発表した。
開発材料は高温高圧の水蒸気を流すボイラーチューブに使用される開発材料は高温高圧の水蒸気を流すボイラーチューブに使用される
 同時に、プラント機器設計に必要な10万時間(12年)の強度を極めて精度良く予測する技術も開発、これまで検出と予測が難しかったプラントの運転による長時間使用中の材料劣化を容易に診断することを可能にした。これらにより、火力発電の効率は約5%の向上が見込まれ、CO2排出低減と省資源に大きく貢献するとともに、高効率火力発電プラントの安全な運用と安定した電力供給への支援が可能になる。

 火力発電プラントの運転温度を数十度上げることによるCO2削減量は莫大で、燃料費も大幅に削減できるため、環境対策とエネルギー安定供給の両面から火力発電プラントの高効率化が強く望まれている。そのため、従来よりも高い温度で安心して使用できる高強度材料の開発が世界中で求められているという。しかし、温度上昇は使用される材料にとって苛酷であり、高強度の鉄鋼材料とそれらの強度・寿命を正確に予測する方法を確立する必要があった。

 今回の開発成果は以下の通り。


  1. 将来の700℃級高効率火力発電用の高強度鉄鋼材料の設計指針を確立
    高温で使用される鉄鋼材料(耐熱鋼・耐熱合金)に関し、産学官の最先端技術を結集して、長時間特性であるクリープ破断強度に及ぼす微細組織の変化機構・合金組成との関係を解明した結果、従来材と比較し25~50%クリープ破断強度を向上させる合金設計指針を確立した。開発した鉄鋼材料は強化機構の異なる3つのタイプ、すなわちフェライト系耐熱鋼、オーステナイト系耐熱鋼およびNi基合金があり、これらすべてでいずれも世界最高の強度を実現した。火力発電プラント機器の材料コストを低減するためには、強度は高いが高価なNi基合金の使用量を減らし、比較的安価なフェライト系耐熱鋼やオーステナイト系耐熱鋼の使用量を増やすことが求められており、今回の成果により、将来700℃級高効率火力発電の実現が期待される。

  2. 火力発電プラントの安全・安心操業に必要な、耐熱鋼の寿命評価プラットフォームを開発
    耐熱金属材料が高温クリープ変形で生じる僅かな損傷・組織劣化を検出し、定量的に診断できる新しいプラットフォームの開発に成功した。同プラットフォームを用いることで、機器の設計寿命10万h(12年)後の材料の劣化度合いを20%以内の高い精度で予測することが、世界で初めて可能となった。




 この結果、火力発電の効率は約5%の向上が見込まれ、CO2排出低減と省資源に大きく貢献できる見通しが得られ、将来のエネルギー安定供給の可能性が大きく広がったという。 今後は、設計提案・試作したモデル鋼・合金と、寿命予測プラットフォームの実用化を目指す。また、完成度の高いフェライト開発鋼については、2014年度末を目処に国際規格への登録と火力発電プラントでの実用化を目指す。さらに、完成したプラットフォームを使用して、既設および新設プラントで使用されるボイラー鋼管の高精度寿命予測を実施し、火力発電プラントの安全・安心な操業に貢献していく。