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産総研など、ヘリウムイオン顕微鏡像の解像度向上を理論で予測

 産業技術総合研究所は、中国・四川大学、スペイン・バスク大学と共同で、ヘリウムイオン顕微鏡(HIM)像を予測する計算技術を開発し、ナノデバイス開発に重要な役割を果たすグラフェンの観察に応用した。この計算技術によりグラフェンのHIM像をシミュレーションし、グラフェンの格子像を観測するために必要なHIMの解像度を求めた。

 HIMは、照射するイオンビーム強度を弱くすることで試料を破壊せずに撮像でき、イオンビーム強度を強くすることで試料の加工を行うことができる。今回の研究では、これにシミュレーションを応用した結果、近い将来に高解像度画像も撮像できることの可能性を示した。この結果は、ナノデバイスを構成する材料開発に貢献すると思われる。

 HIMは試料がヘリウムイオンと衝突した後に放出する電子の強弱によって撮像を行うものである。走査型電子顕微鏡(SEM)と同様に、デバイス構造の内部に作りこんだ試料をそのまま破壊せずに観察でき、SEMよりも鮮明な像を得ることができる。しかし、HIMによる撮像原理の機構は解明されておらず、解像度をどこまで上げられるのかも十分にわかっていないため、理論的な研究が待ち望まれていた。

 なお、今回の研究開発は海洋研究開発機構 地球シミュレータセンターの一般公募プロジェクト「カーボンナノチューブの特性に関する大規模シミュレーション」の一環として行った。

(左)ヘリウムイオン顕微鏡の概念図、(右)シミュレーションで予測されたグラフェン格子像(左)ヘリウムイオン顕微鏡の概念図、(右)シミュレーションで予測されたグラフェン格子像