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日立メタルプレシジョンなど、鉄やチタン合金など融点の高い金属を接合できる摩擦攪拌接合用ツールを製品化

ツールの外観ツールの外観 日立メタルプレシジョン(HMP)は、日立製作所および東北大学と共同で、従来の金属製摩擦攪拌接合用ツールでは接合が難しかった金属の接合を可能にする金属製摩擦攪拌接合用ツール(以下、新FSWツール:Friction Stir Welding)のロストワックス法による量産技術を確立した。HMPでは今秋より販売を開始し、自動車、航空機分野をはじめ各分野に展開する。

 摩擦攪拌接合は、回転するツールを接合する材料の間に挿入し、接合部に沿ってツールを回転移動させることで接合する方法。接合する材料と回転するツールの間で発生する摩擦熱で接合材料を軟化させると同時に、ツールの回転により材料を混ぜ合わせることで接合する。この接合方法は、接合後の変形が小さく、接合欠陥も少ないため、製品の高品質化と低コスト化を実現でき、さらに粉塵を発生しないメリットもある。1997年に日立製作所が、アルミニウム製鉄道車両の製造において、世界で初めて実用化した。

 しかし、従来の金属製摩擦攪拌接合用ツールは、融点が高く接合の難しい鉄やチタン合金、ジルコニウム合金に適用するためには、ツールが摩擦熱などの影響で損傷してしまうなどの課題があったという。そこで、東北大と日立製作所は、2006年に東北大工学研究科金属フロンティア工学専攻石田研究室が発見した「高温でも高強度となる特性を有する金属間化合物(Co3(Al,W))を分散したCo基合金(合金名称:MAST(マスト))」を用いた新FSWツールの開発に取り組み、2010年に開発に成功した。

 HMPは、ロストワックス法による精密鋳造品を、高度に制御された自動化ラインを用いて、金型製作から出荷まで、一貫した生産を行っている。特に苛酷な条件で使用される自動車用ターボチャージャー用タービンホイールで高い評価を得ており、欧州車を筆頭に世界の高性能車でタービンホイールが採用されている。そのロストワックス法を用いて、新FSWツールの量産技術を確立した。

 従来のツールでは、工業的に接合の難しかった融点の高い鉄やチタン合金、ジルコニウム合金などの接合も可能であることから、自動車、航空機をはじめ、電力プラントや化学プラントなどの需要が期待できるという。HMPでは、新FSWツールを次の主要製品の一つとして各分野に積極的に展開し、2015年に10億円/年以上の販売を目指す。