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第190回 人とくるまのテクノロジー展2014開催、採用進む低フリクション省燃費技術

 自動車技術会は5月21~23日、横浜市西区のパシフィコ横浜で第23回自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展2014」を開催、環境や安全、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)関連などのテーマを中心に出展がなされた。ここでは同展での出展技術のうち、環境、特にフリクションの低減による燃費改善に関わる技術を紹介したい。

展示会のもよう展示会のもよう 自動車メーカーではたとえば、スズキが「ハスラー」に搭載された「R06Aエンジン」の技術を紹介した。燃費改善につながるエンジンのフリクション(メカニカルロス)を低減するため、まずはシリンダーブロックのライナー中心とクランクシャフト軸心をずらすオフセットクランク構造を採用して、膨張行程のピストンサイドフォース低減を図った。また、ピストン回りでは、スカート形状の最適化やスカート部に樹脂コーティングを施すことでフリクションを低減。さらにピストンリングでは、トップリングおよびオイルリングに摺動性能に優れるCrN(窒化クロム)コーティングを施し、フリクションを低減した。

シェフラージャパンのブースシェフラージャパンのブース 部品メーカーでは、シェフラージャパンが直打式動弁系における表面改質によるフリクション低減の手法として、板金製メカニカルバルブリフターのカム接触面を削り、研磨に加えてCrNコーティングやダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングで表面仕上げしたサンプルを展示した。同社では、水素含有DLC成膜品と水素フリーDLC成膜製品を提供している。水素フリーDLCは硬質で摩耗に強い上、水素含有DLCで問題にされるエンジンオイル中の添加剤によるDLC膜の摩耗促進の心配はないものの、内部応力の高さからストレスが加わった際の膜の剥がれや相手材への攻撃性などが懸念され、水素含有DLCが選ばれることも少なくないという。

日本ピストンリングのブース日本ピストンリングのブース このDLCコーティングではフリクション低減を目的に、ピストンリング各社(リケン、日本ピストンリング、TPR)で量産体制が整いつつあるようだ。水素フリーで極めて高硬度のテトラヘデラル・アモルファス・カーボン(ta-C)膜なども検討され、問題となる膜の剥がれがない、内部応力のコントロールも可能になっているという。

H.E.F Durferrit Japanとナノコート・ティーエスのブースH.E.F Durferrit Japanとナノコート・ティーエスのブース 低フリクションの表面改質関連では、H.E.FグループのH.E.F Durferrit Japanとナノコート・ティーエスが共同出展、PVDプロセスによるDLCコーティングの処理品を展示した。新技術としては、独自開発のレーザー装置によりマイクロテクスチャーを施すことで潤滑領域を最適化(流体潤滑領域にシフト)する「Micro-Textured DLC」を紹介、クランクシャフトやシリンダーライナーなどへの適用例を示した。F1などのモータースポーツではすでに実績があり、量産車に展開すべく、生産性を高めたレーザー装置を開発中という。

東洋ドライルーブのブース東洋ドライルーブのブース また、パーカー熱処理工業では、リニアイオンソースやUBMスパッターなどプラズマ源の最適な組み合わせで成膜できる「ハイブリッドPVDシステムCarboZen」を提案、基材との密着性が高く、耐摩耗、高潤滑、高耐食など多彩なDLCコーティングを成膜できることを紹介した。東洋ドライルーブは、従来から取り扱っている二硫化モリブデンやグラファイト、フッ素樹脂などの固体潤材をベースにした結合型固体潤滑被膜のラインナップを補う耐摩耗性の高い被膜として、昨年から受託事業に乗り出したDLCコーティングを紹介した。

 トヨタ自動車がグループでの世界販売台数が1000万の大台を超えるなど、2013年度の自動車販売は3年連続で前年度を上回る好調を示した。生産拠点の海外移転が進んでいるとはいえ、依然として自動車産業は裾野が広く、我が国産業の中枢で、また、高度な技術で世界と戦える砦とも言える。今回紹介したようなフリクション低減による燃費改善技術をはじめ、日本がリーダーシップをとる自動車分野を牽引し続ける、革新的な技術が絶えず求められている。