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第201回 東京モーターショー2015が開催、環境保全と走りの快適性に貢献する部品・材料・表面改質技術

 日本自動車工業会( http://www.jama.or.jp )は10月29日~11月8日、東京・有明の東京ビッグサイトで「第44回東京モーターショー2015」を開催した。乗用車、商用車、二輪車、カロッツェリア、車体、部品・機械器具関連製品、自動車関連サービス、SMART MOBILITY CITY 2015を含む総合ショーとして開催。世界11ヵ国から合計160社が参加し、国内全ての乗用車・商用車・二輪車メーカー14社15ブランド、海外メーカー16社26ブランド(乗用車・商用車・二輪車)が出展した。FCA(フィアット クライスラー オートモービルズ)グループの4ブランド(アルファ ロメオ/フィアット/ジープ/アバルト(初出展))が8年振りに復帰したほか、フランスのDSが初出展し、メルセデス・マイバッハが復帰するなど、多くの海外ブランドが東京ビッグサイトに集結した。

 ワールドプレミアは76台(乗用車42台、商用車6台、二輪車18台、カロッツェリア5台、車体5台)、ジャパンプレミア(日本初の発表)は68台(乗用車49台、商用車1台、二輪車15台、車体3台)が出展された。

FCV元年、水素化社会を支える部品技術

トヨタ自動車「FCV PLUS」トヨタ自動車「FCV PLUS」 トヨタ自動車では今回、水素エネルギーが普及した近未来を想定した燃料電池車コンセプト「TOYOTA FCV PLUS」を出展した。車外の水素でも発電が可能で、自宅や移動先でも電力の供給減となる。

左:高圧水素供給バルブ、右:減圧弁左:高圧水素供給バルブ、右:減圧弁 同社では昨年末に燃料電池自動車(FCV)「MIRAI」を市場に投入しているが、同FCVでは70MPaの高圧水素タンクを搭載。ジェイテクトでは、同FCVの動力源となる高圧水素が貯蔵されているタンクに装着され、高圧水素を封止・供給する役割を担う「高圧水素供給バルブ」と、バルブから供給された高圧水素を下流のスタックで使用可能な圧力まで減圧する「減圧弁」を開発し、提供している。

「HONDA WANDER STAND CONCEPT」「HONDA WANDER STAND CONCEPT」 ホンダでは、「WANDER=自由に動き回る」をコンセプトにした電気自動車(EV)「HONDA WANDER STAND CONCEPT」を参考出品した。全方位駆動車輪機構の「ホンダ オムニ トラクション ドライブ システム」により、身体を傾け体重移動するだけで速度や方向が変えられ、前後左右・斜めまでどの方向にも自由自在に移動できるため、細い路地にも自由自在に入れる。

日本精工「ニューEVドライブシステム」日本精工「ニューEVドライブシステム」 同システムについては明らかにされていないが、今回トラクションドライブでは日本精工が「ニューEVドライブシステム」を参考出品。アドバンスド アシスト ステアリング 2 エンジンに代わる自動車の動力源となるもので、高速モータを内蔵し、圧縮された瞬間だけ硬くなる性質を持つ特殊なオイルを介して、ローラで動力を伝達することで、歯車を使わずに動力を伝えるトラクション減速機を採用。トラクション減速機は“転がり"で動力を伝達するため、摩擦損失が少なく、静粛性に優れているという。

エンジンの省燃費化を支える表面改質技術

 FCVやEVの進化を謳う出展が多い中で、低フリクション技術を積み上げて省燃費化を図る内燃機関車の最新技術も多数披露された。その中でマツダの「飽くなき挑戦」を象徴するロータリーエンジン(RE)搭載のスポーツカーコンセプトモデル「Mazda RX-VISION」では、三角形のロータが回転することによって動力を生む、独特の構造をもつREエンジンの出力、燃費、耐久性などの性能向上を推し進めた。

 REエンジンの耐久性向上ではこれまでに、耐摩耗性や低摩擦性を実現するダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティング技術なども貢献したが、リケン、日本ピストンリング、TPRのピストンリング3社では水素フリー化DLCコーティングによってエンジン油中のモリブデン系耐摩耗添加剤による劣化がなく、また厚膜化によって長期間DLC膜の特性を保持するアプローチが示された。

日本ピストンリング「ディンプルライナ」日本ピストンリング「ディンプルライナ」 また、日本ピストンリングではピストンリングと摺動するシリンダライナとして、シリンダ内周面のピストンストローク中央部に微細なディンプルを形成し、流体潤滑下で摺動面積を減らすことでピストンリングとの摩擦力を低減しエンジンの燃費改善効果をもたらす「ディンプルライナ」を展示した。

 自動車メーカーでは環境、安全、エネルギー問題への対応が喫緊の課題だが、今回のモーターショーでは、クルマ本来のあるべき姿である走りの快適性などの新しい形が多方面から示された。こうした中で、ここで一端を示した部品・や材料・表面改質技術の進化によって、走りを楽しみつつ環境保全に貢献する車が次々と登場してきている。