日本MID協会、第16回定例講演会を開催

 日本MID 協会( http://www.jmid.gr.jp/jp/index.html )は11月1日、東京都目黒区の東京大学 生産技術研究所(駒場リサーチキャンパス)An棟2F コンベンションホールで「第16回定例講演会」を開催した。

18110301MID開催のようす:午前の部の司会を務めたJulian Bashore・日本MID協会幹事(マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパン)(左)と講演者のJudy Ding氏(MacDermid Enthone Electronics Solutions)

 MID(Molded Interconnect Device)は、樹脂成形品表面にめっきなどの金属膜で回路(電極)を形成したモールド部品で、構造部品に回路・電極やコネクタ、シールド効果などの機能を盛り込んだ構造体かつ電気的機能(特性)をもつ複合部品を構成できる。樹脂成形品に回路・電極を自由に形成することが可能なため、FPC、PCB等の部品点数を削減しつつ組み立て工数を削減し、空間スペースを有効に活用した部品の軽薄短小化を可能にしている。

 1996年に「MID研究会」として発足した日本MID 協会は、MIDに関する最新技術の紹介や海外の学協会や国内の他団体との交流を進めているが、当日は日本における先端めっき技術に関する特別講演やドイツで行われたMID Congress の報告を軸に、以下のとおり講演がなされたほか、パナソニックやマクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパンなどMID関連各社によるポスター展示が行われた。

・特別講演「MID にも応用可能な先端めっき・表面処理技術」渡邊充広氏(関東学院大学)… 同氏が副所長を務める同大学 材料・表面工学研究所の、シーズ的開発を中心として基礎から応用に至る研究開発を進める方針や広範な研究成果、社会人教育の成果などについて紹介したほか、めっきの基礎的概要について解説した。続いて、新めっき技術の紹介とMID/プリント配線板への応用事例として、①紫外線(UV)照射を用いた改質によって平滑な樹脂表面に導体損失の少ない回路を形成する高密着めっき技術、②パラジウム触媒の高価・触媒残渣といった問題を解決する、銅触媒を用いた無電解めっきプロセス、③回路形成する部分だけをUV照射によって改質し改質部分のみに無電解めっきを析出させ平滑な回路を形成する異方性無電解めっき技術、④ガラス表面を粗面化することなく、平滑面に銅めっきおよび回路形成を可能にする高密着めっき技術を紹介した。

18110302MID講演する渡邊充広氏

・講演2「電子回路を樹脂成形品に埋設する技術:その埋設構造と製造方法」川井若浩氏(オムロン)…電子部品を樹脂製筐体に埋設し、表面に露出した電極をインクジェット印刷で回路結線することで、電子機器の必須部材だったプリント基板をなくす「プリント基板フリー化技術」について紹介した。生産工程からエッチング、めっき、はんだ実装の工程を削減し、射出成形機と印刷機をメインとした小規模、多品種生産に対応可能な工程に変革できるメリットを謳った。プリント基板フリー化技術を用いた電子回路埋設事例やLED点滅回路埋設事例、曲げが可能な薄型構造事例、ウェアラブル機器などへの適用が可能なエラストマー製筐体構造事例のほか、電子回路の埋設位置事例や立体回路構造事例、電磁シールド構造事例などを紹介。同技術で結線した回路基板に振動試験や曲げ試験など長期信頼性試験を実施、断線がなく良好な電気特性が得られたことを報告した。

・講演3「Electroless Copper Deposits Providing High Ductility and Adhesion for Advanced MID Applications」Judy Ding氏(MacDermid Enthone Electronics Solutions)…同社の最新のMID用無電解銅めっき製品「ELN 500」について、圧縮試験の結果、基板への圧縮応力による内部ストレスが一般的なMID用無電解銅めっき製品の-400MPaに比べ-0.2MPaとほとんど見られなかったことや、引張試験の結果、伸び率が一般的なMID用無電解銅めっき製品の1~3%に比べ8~14%と高く安定していることを示した。また、OEMのテープ試験の結果、ELN 500が良好な密着性を示したことや、50μmという高精度で均一な回路線の幅と回路線の間隔を実現できたこと、非EDTAタイプの無電解銅浴によって成膜効率が向上できたことなどを説明した。

・講演4「電磁界解析から見えるもの」栁 明男氏(サイバネットシステム)…同社の取り扱う電磁界解析ソフトウェア「ANSYS HFSS」によって、MID(三次元モデル)の電磁界(配線、空間、その他構成材料)やSパラメータ、電圧・電流密度、信号波形、EMCといった電磁界解析が可能なことを、各種の解析事例をまじえて紹介した。同電磁界解析ツールが、今後予想(期待)される高速デジタル信号の伝搬解析に役立つことや、解析による「見える化」によって、不具合個所の検討やユーザーへの性能提示に利用できることを強調した。

・講演5「MID実装の応用例と4社の取組みのご紹介」北郷和英氏(FUJI)と大英エレクトロニクス、ヱビナ電化工業、太陽インキ製造の共同講演…今後普及が期待される3D-MID実装技術を広く普及させるために4社協力のもとで進めている取組みについて紹介した。大英エレクトロニクスのMID(回路成型部品)設計サービスや、エビナ電化工業の金属触媒が添加された特殊樹脂素材に対して、配線形成したい場所へレーザーを照射し活性化させた後、めっき工程を経て3D配線を形成するLDS(Laser Direct Structuring、レーザー直接構造化)技術、太陽インキ製造のMID用各種成形樹脂との密着性や回路形成金属との密着性が良好な「3D-MID ソルダーレジスト」、FUJIの3D-MID基板に対しモジュール型汎用自動組立装置SmartFABを用いた電子部品の実装技術が紹介された。MID技術の応用と採用のメリットとして、MIDコネクタや配線・フレキの代替による小型化、組立工程削減による部品点数削減、検査工程の集約による歩留まり向上などを挙げた。各工程における条件を事前に共有できるため設計段階でプロセス全体を考慮した設計が可能で、トライ&エラーが発生せず最短で製品を製作できるという、4社で活動するメリットを説明した。

・講演6「日本初!!三次元実装機を用いた試作から量産体制の取組み」岡孝 充氏(JOHNAN)…国内で初めて実装機を使ったEMSでMID実装の試作から量産を開始した同社と、国内初のMID部品実装装置の販売を開始したヤマハ、国内で初めてMID部品の量産を開始した三共化成という、三つの初が連携して3D-MID実装体制を確立したことを述べ、はんだ散布・部品マウント・リフローというプロセスで構成される3D-MID実装において課題だったリフロー加熱時の落下(微小な移動)に対して、JOHNANが課題解決を行って全部品を一括でリフロー可能なプロセスを確立したことを紹介した。3D-MID実装の加速にあたっては、設備の生産スピードを向上させることで製造コストを下げる必要があることに言及。熱に弱い筐体/部品への対応として、必要な電流量を確保するための塗布形状の変更や、塗布条件を確立し塗布終端のショート防止に取り組んでいることを報告した。

・協会からのお知らせ「MID ガイドラインの進捗」日本MID 協会 吉澤徳夫氏(三共化成)…ガイドライン制定の背景として、小型化や部品点数削減、組立工数削減といったMIDのメリットの一層の追求やMIDを活用するための周辺技術の開発といったMIDの課題、適用範囲や引用規格、用語および定義、ピール試験やプル試験といった機械的性能試験などのMIDガイドライン案について紹介した。日本MID協会としては引き続き、日本におけるMIDの啓蒙活動や日本のMIDに関する情報発信などの活動を推進していくが、そのためには他の学協会や関連企業との交流・協力が不可欠と述べた。

・講演7「The 13th MID Congressの報告」新野俊樹氏(東京大学)…本年9月25日~26日にドイツ・ビュルツブルグで開催された同MID国際会議に関して、議長を務めたフリードリヒ・アレクサンダー大学教授のJörg Franke博士による開会挨拶や、セッションの内容、トピックスなどについて紹介、報告した。

 講演終了後はJulian Bashore氏(マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパン)の司会で「パネルディスカッション: MID 技術の展望-MID Congress より」が行われ、定例講演会は盛況裡に閉会した。