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ジェイテクト、レアアースの使用を抑えた重希土類フリーモータの開発に成功

 ジェイテクトは、重希土類を用いないことでレアアースの使用を抑え、さらに独自の技術で製造工程を簡略化し、製品性能を向上させた埋込磁石型モータ(IPMモータ)を開発した。本年1月から、自動車部品用アクチュエータ向けに同社 東刈谷事業場(愛知県刈谷市)で生産を開始している。

 焼結磁石を用いた表面磁石型モータ(SPMモータ)には、実用化されている磁石の中で最も磁力の強いネオジム磁石に、耐熱性と保磁力を向上させるジスプロシウムを添加したものが使用されている。このジスプロシウムは全17種類のレアアースの内、世界的に希少で分布が偏在している重希土類に分類され、鉱物資源として利用するには軽希土類元素に比べて安定調達・材料コストの観点でリスクを抱えている。

 そこでジェイテクトでは2011年から、ネオジムとジスプロシウムを使用しないモータの開発に着手した。その結果、焼結磁石を用いたSPMモータと同等の高出力・低トルク変動を誇り、かつネオジムとジスプロシウムを使用しない重希土類フリーのボンド磁石を用いたIPMモータの開発に成功した。

 開発品にはネオジムとジスプロシウムを使用せず、重希土類フリーで安価なサマリウムを原料としたボンド磁石を採用した。これにより、重希土類の調達リスク回避と安定供給を図る。

 ボンド磁石の利点である成形自由度の高さを活かして、表面積を大きく取れるU字形状に磁石を埋め込んだIPMモータとし、ロータ形状にU字埋め込み形状を採用することで、限られたスペースでの磁石表面積を大幅に増加させ、焼結磁石と同等のトルクを達成した。

ロータ形状ロータ形状

 製造工程では、磁場成形金型設計と性能解析手法によって、独自の射出成形技術を生み出すことに成功し、着磁率・配向率の向上によって信頼性を高めることができた。そのうえ、従来の6工程から自社内完結の2工程にすることで生産性向上も実現した。

製造工程製造工程

 以上の特長より、ボンド磁石の成形自由度を活用した独自の金型設計を確立したことに加えて、磁石先端形状の最適化を実現したことで、ロータコアへの供給磁場の向上とボンド磁石の流動経路の磁場を向上させ、「モータのトルク向上」とIPMモータでは世界最高レベルの「トルク変動の低減」を達成した。