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第23回『アパートの鍵貸します』

 みなさま、年末年始のお休みはゆっくりと過ごせましたか?

 今年がみなさまにとってよい年となることを願いつつ今回紹介するのは、ビリー・ワイルダー監督によるペーソスあふれるメリー・クリスマス&ハッピー・ニューイヤー・ソフィスティケーション・ラブコメディ、『アパートの鍵貸します』。

 ニューヨークの保険会社に勤める独身平社員バクスター、通称バド(ジャック・レモン)は、出世をねらって、4人の課長の逢い引きに自分のアパートの部屋を貸し出している。そこにある日、人事部長のシェルドレイク(フレッド・マクマレイ)が噂を聞きつけ、バドのアパートの鍵を借りることに。ところが何とシェルドレイクが自分の部屋に連れ込んだ女性は、バドが密かに思いを寄せるエレベーターガール、フラン(シャーリー・マクレーン)だった。バドの恋の行方やいかに?

 さて作中、人事部長のシェルドレイクから急にアパートの予約が入り、一気に昇進への勝負をかけたバドが、4人の課長にルームレント断りの電話をする場面がある。

 そこで登場するアイテムが、400枚に及ぶ名刺が円周上に収納された定番商品、ローロデックスの名刺ホルダーである。360度回転するため、アルファベットインデックスで探せば目当ての名刺がすぐに見つかる。とはいえ、近年の時系列による名刺整理とか、名刺をスキャンしてデータベース化といった流れからは過去の産物だろうと思いきや、現在のオフィスでもいたって健在のようである。名刺を入れるスリーブに切り込みが入れてあって本体からの着脱がスムーズなため時系列の整理にも対応する。何より検索が早い。さらに、カバー付きのロータリー(回転)でスリーブの汚れを防ぐとともにデザイン性がアップした進化系も登場している。これは台座と本体のジョイント部も360度旋回するため、設置場所から動かすことなく見やすい位置に変えることも可能。よりメカニカルな逸品になっている。

 さて、バドはこの名刺ホルダーをクルクルクルクル、こまねずみのように回して課長の名刺を探っては電話していく。「おい、バーディ・ボーイ、つれないこと言うなよ」といった会話もあるが、野心家のバドにとって、優先すべきは課長より人事部長である。次々と断りの連絡を入れる。

 ロマンスあり、ラケットによるパスタさばきあり、ジャズあり、拳銃あり(!?)の本作は、1960年度のアカデミー賞で作品、監督、オリジナル脚本、編集、美術監督賞を、ベネチア国際映画祭ではマクレーンが主演女優賞をそれぞれ受賞している秀作である。