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第38回『ブルース・ブラザース』


 帽子、サングラス、ネクタイ、スーツ、すべて黒ずくめの二人組みと言えばブルース・ブラザースである。現在活躍中のお笑いコンビ「2700」もそんないでたちだが、もちろん平成のブルース・ブラザースと名乗っているとおりオリジナルではない。日米問わず、コメディアンで彼らのファンは多い。

 イリノイ州、刑務所から出所したジェイク(ジョン・ベルーシ)は孤児院で弟のように共に暮らしてきたエルウッド(ダン・エイクロイド)のパトカー風の車で出迎えを受け、孤児院で母親代わりのシスターと会い、税金が払えず差し押さえ寸前だと知る。警察、マシンガンや火炎放射器などで襲う過激な謎の女(キャリー・フィッシャー)、ナチ党や何やかやに追われながら、以前の仲間を集めブルース・バンドによるコンサートで税金を作ろうとするが…。

 さて、本物のパトカーの追っ手をかわし爆走するパトカー風の車、エルウッドが「ブルース・モビル」と名づけた車は、「1974年型ダッジ」である。「こんな車は気に入らない」というジェイクに、エルウッドは車の性能を見せる。何と急発車し、ほとんど跳ね上がりかけている急勾配の跳ね橋(跳ね橋は本当によく登場する)を車で駆け上がり、川を越え、向こうの跳ね橋に飛び移るのである。…なんてことはできないと思うが、パワーのある車ではあるらしい。1970年にマスキー法(自動車排ガス規制)が成立してからというもの、高出力エンジン搭載車の多くが生産を止め市場から消えていく。しかしその中で比較的設計が新しいエンジンを搭載していたこの車は、圧縮比を下げるなどでマスキー法に対応しながらもそれ以前に劣らないエンジンフィールを維持していたらしい。アクロバティックな走りの後、エルウッドが言う。「規制前のエンジンだから加速がいい。サスペンションもいい」と。トイザらス(公開当時、日本では展開していない)などショッピングモールを破壊しつつ追っ手を振り切るダッジの後には、西部警察など目ではないパトカーの残骸が山を築いていく。

 ジョン・ランディス監督の本作は、単なるコメディー映画ではない。ジェームズ・ブラウンやレイ・チャールズ、アレサ・フランクリンなど大物ミュージシャンもキャストしての音楽あり、カーチェイスありの、当時の額で製作費約30億円という、アクション・ミュージカル・コメディーの大作である。