第157回 工業用内視鏡の状態可視化で機械の信頼性向上を!

オリンパス「工業用内視鏡」 東京電力は先ごろ、工業用内視鏡による福島第一原発2号機の原子炉格納容器内の調査を行った。廃炉に向けた作業の一環で、炉心溶融(メルトダウン)した核燃料が溶け落ちていると見られる格納容器内の様子や汚染水の水位、内部の温度などを調べるのが目的。工業用内視鏡で観察・撮影された映像からは、内部の配管に大きな損傷はないが、内壁の塗装が溶けており、高温状態にさらされたことや、水面の位置を確認できなかったことから水位が予想以上に低下していることが分かった。

 今回観察・撮影に使われたのはオリンパス製の工業用内視鏡で、格納容器につながる貫通口から入れられ、内部を約30分間撮影した。
工業用ファイバースコープの構成図工業用ファイバースコープの構成図
 工業用内視鏡の一つ、工業用ファイバースコープは、数千から数万本の光ファイバーを束ねたイメージガイドを通して直接、目視観察できる軟性内視鏡。挿入部、操作部、接眼部から構成され、画像伝送用イメージガイドファイバー、照明用ライドガイドファイバー、湾曲ワイヤーは内部に組み込まれている。手元操作部のアングルレバーで先端部を上下左右4方向に湾曲させることが可能で、これにより先端部を検査箇所に近づけやすくする。先端部を湾曲させる機構では、指の動きと先端の動きがシンクロする「メカニカル湾曲(医療用内視鏡方式)」と、より感覚的な方向の制御を可能にした「ジョイスティック湾曲」との利点を両立させた「トゥルーフィール機構」がある。基本的な構造はメカニカル湾曲であるが、ジョイスティック操作時の負荷をモーターの動力によって軽減させるパワステのような構造になっている。
スコープの挿入部スコープの挿入部
 原発内部のように過酷な環境にさらされるスコープの挿入部は、精密な内部構造を守るため、外装はらせん管、編管、樹脂チューブの上に特殊樹脂含浸タングステンブレードを被服した独自の四重構造になっており、極めて強度が高く、ねじれがなく、柔軟性を保っている。こうした材料技術に加え、さらにこのメカニカルな湾曲動作をなめらかに動かすのには、二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤が使われている。

 非破壊検査は、大掛かりな解体作業や無駄な操業停止を伴わず、短時間で内部状況を確認できる手法として、航空機や自動車、各種プラントの品質管理や状態監視に幅広く使われている。

 非破壊検査を行う装置には超音波や渦流、X線などを活用したものがあるが、中でも工業用内視鏡は、わずかな隙間から内部の対象物に接近し、肉眼で見るのと同様に観察でき、リアルタイムで状況を判断できることから多用されている。

 今回の工業用内視鏡による撮影で、福島第一原発2号機の状況がすべて明らかになったわけではないが、機械を解体することなく損傷状況を可視化できたことは、決して無駄な試みではなかっただろう。工業行内視鏡によるそうした観察結果をフィードバックすることで、今後の各種プラント機械の信頼性向上設計につなげて欲しい。