第57回 鳩山新内閣へ、景気回復に向け産業界との密な対話を

hatoyama 第45回総選挙において、民主党が単独過半数(241議席)を大幅に上回る308議席を獲得、鳩山由紀夫・民主党代表が次期首相となることが確実となった。産業界としては、閉塞感のある経済環境打破への期待をこめた政権交代の後押しという意味合いが強いだろう。

 そんな中、日本自動車工業会、石油連盟など産業界の代表団体が懸念するのは、2020年までに2005年比30%(1990年比25%)の二酸化炭素(CO2)を削減するという民主党のマニフェストである。これは麻生首相が決めた中期目標2005年比15%削減(1990年比8%減)を大幅に上回る。京都議定書の2008年~2012年度の排出量の平均値を基準年(1990年)比6%削減する目標に対し、2007年度の排出量は逆に同9%増えている。これは、産業部門で1990年比2.3%減という一方で、商業・サービスなどの業務部門や家庭部門がいずれも同40%以上増えているためだ。だからこそ健闘している産業部門では、民主党の掲げる1990年比25%、2005年比30%という突拍子もない数値に疑念を抱いているのである。

 本年6月に麻生首相がCO2排出量削減の中期目標として2005年比15%減を決めたのを受けて産業界では、たとえば鉄鋼なら約2割省エネ化を図るコークス製造技術をコークス炉6基に導入することを想定、発電では原子力発電所を9割新設し現在の稼働率60%程度を80%程度に引き上げるなど個々に対策を打ち出したが、産業界では現状、CO2の2005年比10%以上の削減は技術的に難しいとの見解が大勢を占める。

 民主党としても掲げた数値の根拠として、全量買取りを前提とした太陽光発電や風力発電、バイオマスなど再生可能なエネルギーの開発を想定しているのだろうが、太陽光発電の30年保障といった耐久信頼性や、日本の風土に合った発電効率が高く安全な風力発電の設置拡大など、再生可能なエネルギーの開発も一朝一夕に改善されるものではない。長期政権を続けてきた自民党との関係をもとに政策要望してきた日本経団連など産業界にとって、民主党との対話の経験はまだ少なく、そのマニフェストに産業界の声が反映されているとは言いがたい。国民に選ばれた政党としてマニフェスト厳守は重要であろうが、必ずしも子ども手当てや高速道路無料化が支持されているわけではない。エコカー支援策の効果もあって8月の新車販売台数が13ヵ月ぶりに前年同月を上回るなど、ようやく景気回復が踊り場に差し掛かってきた時期だけに、鳩山新内閣にはぜひとも産業界との対話を密にして産業界の現実を認識してもらい、企業のR&D活動の火を消すような、企業の体力をそぐような方向に政策を進めることのないよう、自動車関連諸税の見直しなど市場活性化、さらには本格的な景気回復へと導く舵取りを期待したい。