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 インドは今、自動車の成長市場として各国が注目している。地元の自動車メーカー、タタ社が2500ドル(26万円くらい)というULCC(超低コスト車)「ナノ」をリリース、日産のゴーン社長も今のところトヨタが進出しない分野としてULCC参入を表明した。注目されるゆえんは、インドで二輪車からの置換え需要が見込まれるからだ。だがホンダはこれに対し燃費向上など、スーパーカブを進化させた二輪車で対抗するという。二輪車需要、スクーター需要が続くと見る。

 さてスクーターで思い出す映像は、ウィリアム・ワイラー監督の『ローマの休日』か。ヨーロッパ各国を親善旅行中の某国王女アン(オードリー・ヘプバーン)は、ローマ滞在中に過密スケジュールに嫌気がさし、ひとり街に出る。そこで出会ったアメリカの新聞記者ジョー・ブラッドリー(グレゴリー・ペック)は、王女とは知らずにアンを自分のアパートに連れ帰るが(アンが睡眠薬でおねむだったので、決してチャラ男ではない…と思う)ふとしたことから王女だと知り、特ダネをねらいローマ観光案内を引き受ける。お供の同僚カメラマン、アーヴィングは、隠しもったカメラ(日本製エコー8。鈴木光学から1951年に発売されたジッポー型スパイカメラ!)で王女のスナップ、たとえば王女を捜索する密偵との乱闘シーンなんかもしっかり押さえる。そんなこんなでアン王女としがない記者ジョーの決して叶うはずのない恋が静かに激しさを増していくわけだが、ここでスクーターが、コロセウムやサンタ・マリア・イン・コスメディン教会の「真実の口」、トレビの泉などを巡り、恋にいたるためのツールとなっている。すでにクルマの交通量が多いローマで、スクーターでの颯爽とした街乗りの、なんてオシャレなことか。だがその光景がイケてるのはアン王女とジョーのツーショットだからで、インドのようにスクーターにすら4、5人乗っかるとなると、様相が違ってくる。女性ばっかりが相乗りすればハーレム状態で結構じゃないかって?…まあ、それなりに結構だろうけど、タイトルも『アラビアの休日』とかにしないといけなくなりそうだ。

 ともかく、二人乗りのクルマにも6、7人は乗り込むだろうと言われるかの国に、果たしてホンダが省燃費の二輪車で対抗できるのか、しばしスクリーンのこちら側で見守ってみたい。