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第61回『ライラの冒険 黄金の羅針盤』

 本作は、フィリップ・プルマン作ファンタジー小説三部作の第一部「黄金の羅針盤」を映画化したもの。オーディションで1万5,000人以上から選ばれた天才子役、ダコタ・ブルー・リチャーズが主人公のライラを演じている。

 舞台は、この世界と似て非なるパラレルワールドのイギリス。誰もが自分の分身である「ダイモン」と呼ばれる動物の精霊と寄り添い生活している。オックスフォード大学のジョーダン学寮に住む孤児のライラ・ベラクア(ダコタ・ブルー・リチャーズ)は、親友のロジャー・パースロウ(ベン・ウォーカー)たちとの賭けで学長の部屋にしのび込み、叔父のアスリエル卿(ダニエル・クレイグ)が北極で発見したダストに冠する研究資金の件で評議員達にプレゼンしているのを聞いてしまう。ちょうどその頃、子供達が失踪するという事件が相次ぎ、北極に旅立った叔父も行方知れずとなる。ライラの親友・ロジャーたちと叔父の行方について手がかりをつかみたいライラのもとに、コールター夫人(ニコール・キッドマン)から旅への誘いが舞い込む。旅立つライラに学長は、アスリエル卿から預かった「黄金の羅針盤」を手渡した。真実を導く真理計だという。コールター夫人とロンドンに旅立ったライラだったが、子供たちをさらったゴブラーのリーダーが夫人だと知って逃げ出し、子供たちを取り戻そうとするジプシャン族とともに、肩にダイモンのパンタライモンをのせ、黄金の羅針盤が示す北極に向かう。

スパイ・フライスパイ・フライ ところで、ここで登場するメカはすべて黄金である。ロンドンに向かうツェッペリン型飛行船も、三つの針が回転したのち文字盤の36の絵を指し真実を示す羅針盤も、コールター夫人が放ったゼンマイ仕掛けの虫型ロボット「スパイ・フライ」も。フライといっても蝿よりも、バッタに似ているようだ。長距離を飛び続け襲撃するところも、群れをなし変態したトノサマバッタっぽい。翅をこすり合わせて音を立てて飛ぶところがリアルであり、ちょっとゼンマイを巻いただけで何日間も稼動しているのは、かなり省エネで環境にやさしいメカである。ちょっと凶暴ではあるが…。

 魔女も熊の王も登場するファンタジーながら、妖艶なニコール・キッドマン演じるコールター夫人の存在が、ストーリーを引き締めている。きれいなブロンドに黄金のドレス、黄金の猿のダイモンを肩に乗せている。子供が観る作品ということもあってか、いつになく露出は抑えぎみだが、相変わらずセクシーな内に複雑な感情を秘めている。原作者から出演をオファーされたお墨付きのキャストである。興行成績が堅調にもかかわらずリーマンショック後の不況で続編政策がストップし、彼女の演技の続きが見られないのはちょっと残念に思う。