第12回 国際航空宇宙展に見る高信頼性技術

 続けての展示会ネタで恐縮だが、「2008年国際航空宇宙展(ジャパンエアロスペース2008/JA2008)」が10月1日?5日まで横浜・みなとみらいのパシフィコ横浜で開催された。主催は日本航空宇宙工業会。期間中は4万2,160名が来場した。

 今回は2013年の就航を目指す国産リージョナルジェット機「MRJ」をはじめ、AIRBUS A380、Boeing 787などの航空機の模型が注目を集めたほか、ロケット、衛星などの模型や、ターボファンエンジンを中心とするジェットエンジン模型などが多数展示された。

 ジェットエンジン、特に主流の2軸ターボファンエンジンでは、最前部のファンと最後部の追加タービンを支える低速軸系とコンプレッサおよびタービンブレードを支える高速軸系の二つの回転軸で、それぞれ二つの円筒ころ軸受と一つの3点接触玉軸受が使われている。NTNではBoeing 777のGE90-115Bターボファンエンジンに搭載された主軸軸受を展示していた。

 二つのころ軸受には、疲労強度向上のためのショットピーニング処理や振動抑制のための「スプリングフィンガー」という特殊形状が設けてある。3点接触玉軸受は負荷容量増大のため大径のボールをできるだけ多く組み込めるよう内輪を二つに分割している。いずれも材料は耐熱浸炭鋼M50が使われるが、この高硬度な材料が摩耗粉として出た際にアブレシブ(研削)摩耗→焼付きに至らないよう、摺動面に柔らかい銀めっき皮膜が施してある。

 ちなみに某ジェットエンジンメーカーに、「高速性や耐熱性に優れるセラミックボールを使った軸受の採用はどうか」と聞いたところ、「研究開発は進めているが、セラミックスは金属材料のような試験・評価システムが容易でなく、費用も時間も数十倍かかることなどから、採用に至っていない」とのことだった。エンジニアリングセラミックスは機械的特性に優れるが、評価が難しく信頼性の確認ができないのが最大のネックになっているようだ。

ランディングギヤシステム(提供:日本航空) 航空機のランディングギヤ(着陸装置)は、ほとんどが飛行中は機体内に収納される「引き込み式」で、上げ下げはランディングコントロールパネルのギヤレバーで行われる。機体が離陸した際にパイロットがギヤレバーを上方に引き上げると油圧のピストンとシリンダで構成されたアクチュエータが作動しランディングギヤを引き上げ格納する。着陸時はギヤレバーを下げるとランディングギヤが展開される。

 航空機でもフライ・バイ・ワイヤなど電動化が進んでいることから、THKではこのランディングギヤに、近年の射出成形機に見られるようなモータ+ボールねじを使ったアクチュエータを提案していた。「新規参入の決め手は、軽量化と操作性」とのこと。滑らかな動きが可能な直動システムの得意とするところだ。

 川崎重工業では、日本精工が開発したハーフトロイダル式無段変速機(CVT)を使った航空機用主電源供給装置「T-IDG(Traction Drive Integrated Drive Generator)を出展していた。これは、エンジンのアクセサリ・ギヤボックスに搭載・駆動され、エンジン回転数に関わらず一定周波数400Hz(115V)発電ができるよう、発電機を一定回転数に保つための装置である。

「ハーフトロイダル型」と称されるトラクションドライブ無段変速機は高面圧下で大きなせん断力を発生するトラクションオイルによって動力を伝達する。向かい合った富士山型の入力ディスクと出力ディスクの間に高面圧で挟んだパワーローラーを傾けることで入出力ディスクの接触点半径を変化させ(介在するトラクションオイルにより)、入・出力間の速度を無段階に調節できる。エンジンからの駆動速度は約4,500?9,000rpmの間で変動するが、油圧制御によるこのトラクションドライブCVTが変速動作を常時行うことで、増速ギヤを介して24,000rpmの一定速度で駆動、400Hz一定周波数の交流電力を発電するという。

 今回の展示会をのぞいて、大量輸送・航空機の高速で快適・安全なシステムも、こうした二重三重に安全性がチェックされた、信頼性の高い多数のメカに支えられているとあらためて実感した。空の旅が楽しみたくなった。