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 本作は、『アパートの鍵貨します』のビリー・ワイルダー監督、ジャック・レモン、シャーリー・マクレーンのコンビによるおしゃれなラブ・コメディーである。

 パリ中央市場(レ・アール)そばの娼婦街に赴任してきた正義感の強い警官ネスター・パトゥー(ジャック・レモン)は、ストリートガールたちが仕事場にしているホテルをガサ入れするが、ホテルには上司の警部が客として居合わせ、ネスターはその場でクビになってしまう。ヒモたちがたまり場にするムスターシュ(ルー・ジャコビ)の店でやけ酒をあおるネスターは、イルマをこき使おうとするヒモをノックアウトし、そのままイルマ(シャーリー・マクレーン)のヒモとして一緒に暮らすことに。しかしイルマに客をとらせたくない恋するネスターは、変装してイギリス人の富豪X卿と名乗り、イルマに一晩話相手をさせるだけで500フランを払う。イルマが寝ている間に市場で働いて稼いだ金だ。

 さて、X卿に変装する場所は、ムスターシュの店の地下の酒蔵である。変装したネスターは、酒瓶が入ったケースを上げ下ろしするリフトで店の外の通りに現れる。リフトが上がると、普段はマンホールの蓋のような板が持ち上げられ観音開きになる。イルマと語らった後は、再びムスターシュの操作するリフトに乗って、地下へ。観音開きの板はリフトが下がるとともに閉じられて歩道になる。地下で着替えたネスターは、カウンターの隠し扉を通って地上のバーに戻り、イルマを出迎える。『アパートの鍵貨します』のバドと一緒で、何とも忙しい男である。

 ところでムスターシュの店は、アクチュエーターがレコードを抜き出してセットするジューク・ボックスなど、昔懐かしいメカに満ちている。イルマの鮮やかなグリーンのランジェリーやネスターの切ない演技ほどではないが、見逃せない小道具の一つである。