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第49回『スタンド・バイ・ミー』

 スティーブン・キング原作、ロブ・ライナー監督の本作は、森の奥にあるという事故死体を捜しに出かけた4人の少年たちの友情と訣別をノスタルジックに描いた作品である。アメリカの中学は9月から始まるとすると、ちょうど小学生最後の夏休みの話だろう。

 作家のゴーディー・ラチャンス(リチャード・ドレイファス)が少年時代の親友で弁護士になったクリス・チャンバースが刺殺された新聞記事を読んで回想したのは、オレゴン州の小さな町キャッスルロックでの小さな冒険旅行のこと。小学校を卒業した12歳のゴーディー(ウィル・ウィートン)は、3人の仲間と木の上に組み立てた小屋でカードや雑談に興じていたが、あるとき、行方不明になっている少年が、30kmだか40kmだか先の森の奥で列車にはねられ、死体が野ざらしになっているという話を聞きつけ、4人で捜索の旅に出る。ゴーディーは、フットボール選手として嘱望されていた兄(ジョン・キューザック)の事故死から立ち直れない両親に邪剣にされ、リーダー格で正義感の強いクリス(リバー・フェニックス)は、アル中の父、不良グループの兄という家庭環境から給食費を盗んだ容疑をかけられるなどで将来に不安を感じ、テディー(コリー・フェルドマン)はノルマンジー作戦の英雄ながら今は精神を病む父に屈折した感情を抱き、ちょっと太っちょのバーン(ジェリー・オコネル)は自分に自信がなく意気地がないと周囲からからかわれるなど、それぞれ問題をかかえながら、中学進学や就職などへの進路を前に、ひとつ時を過ごす。

 そんな4人は旅の途中、犬に追いかけられたり、沼にはまったり、夜にコヨーテに脅かされるなど、いろいろな目に遭う。広い河にかかった長い鉄橋を渡ろうというとき、慎重なゴーディーはレールを手で触り、耳を近づける。今のように軸受の異常を見る振動計などがない時代、機械にドライバーなどを当てて耳で聞いて異常がないか判断した。そんな感じで橋の半ばでレールに触れたゴーディーは、驚いて振り返る。車輪から伝わった振動でよもやとは思ったが、やはり汽車が煙を上げて近づいていたのだ。恐る恐る間から川面を見ながら枕木を伝っていた4人だが、汽車に追われ一目散に駆け出し…。さて、4人の旅の終着点やいかに。

 本作は、若くして逝ったリバー・フェニックスや『24』のキーファー・サザーランドが敵役として登場するなどオールスターキャストにして、ホラー作家スティーブン・キングの原作をハートフルに描いた、懐かしい友人を思い出させる一作である。